2022 Fiscal Year Annual Research Report
蝸牛外側壁組織培養と生細胞蛍光イメージングを用いた難聴予防・治療戦略の探索
Project/Area Number |
19K09898
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
増田 正次 杏林大学, 医学部, 准教授 (20317225)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 蝸牛 / 感音難聴 / 外側壁 / 中間細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、耳科臨床において感音難聴に対し有効性が分子生物学的に証明され、かつ保険医療のもとに使用可能な薬剤は存在しない。本研究においては、蝸牛内部の恒常性維持、正常聴覚に重要な役割を有する蝸牛外側壁を研究対象とし、感音難聴治療に有効な薬剤の同定を目的としていた。特に、外側壁を構成する細胞群の中でも、中間細胞が蛍光色素(yellow fluorescent protein, YFP)を発現するマウスを用い、組織培養を継続しながらこの細胞の動態を蛍光顕微鏡下に観察可能な実験系のもと研究を遂行していた。この実験系において、外側壁組織に酸化ストレスとなる薬剤の投与、酸化ストレス保護に作用する薬剤の投与を行い、中間細胞の動態を観察した。 しかし、YFP発現細胞の成長程度、発現強度に関し、検体間で非常にばらつきが高く、定量評価が困難な状態であった。組織成長に関し検体間においてばらつきが大きくなった主原因を特定することはできなかったが、その要因として、もともと外側壁中の中間細胞数が少ないことが定量評価を困難にすることや、遺伝子改変マウス個体間でのYFP発現強度の違いが観察結果の不安定性に関与していると考えた。そこで、最終年度は中幹細胞のみではなく、より観察が容易かつ確実な外側壁細胞全体の成長度の変化(外側壁組織面積の変化として定量化)を観察対象とし、遺伝子改変マウスを使用しないこととした。 この実験系を用いることにより、現在臨床現場で中耳内投与可能薬として用いられている薬剤が、外側壁細胞の成長を促進する現象を観察できた。今後の臨床応用が期待できる知見である。ただし、再現性の確認と観察された現象に対する分子生物学的検討が不十分な状態である。
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