2021 Fiscal Year Annual Research Report
聴神経腫瘍のゲノム解析による腫瘍発生および増大メカニズムの解明
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19K09910
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
藤田 岳 神戸大学, 医学部附属病院, 講師 (90533711)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 聴神経腫瘍 / 遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
聴神経腫瘍は、主に前庭神経のシュワン細胞から発生する神経鞘腫である。ほとんどは良性腫瘍であるが、難聴やめまい症状を引き起こし、増大すると小脳や脳幹を圧迫して死に至ることもある。聴神経腫瘍は、小脳橋角部で最も頻度の高い腫瘍であるが、MRIの普及に伴い、孤発例の発見数は年々増加している。それらの多くは、サイズも小さく経過を観察される症例も多い。聴神経腫瘍の発生には腫瘍抑制タンパクである、MerlinをコードするNF2 遺伝子の異常が関与していると報告されている (Welling DB et al., Hum Genet. 1996) が、NF2 遺伝子のノックアウトマウスが前庭神経鞘腫を発生することはなく、腫瘍の増大速度とNF2 遺伝子異常が相関するわけでもない。さらには、これらの腫瘍遺伝子解析は欧米からの報告がほとんどであり、本邦での遺伝的バックグラウンドの違いも不明である。今回我々は、手術で摘出された聴神経腫瘍の標本からDNAを抽出し、腫瘍の発生や抑制に関わる遺伝子について次世代シーケンサーを用いてターゲットシークエンスを行った。対象患者の平均年齢は61.4歳(40-73歳)であり、腫瘍はほとんどが内耳道に限局しており、最大径は15mmまでの小さい腫瘍を対象とした。このような小さな腫瘍だけを対象にゲノム解析を行った報告はこれまでになく、これまでの聴神経腫瘍のゲノム解析の報告でみられている、NF2遺伝子の変異に加えて、SYNE1やその他多くの遺伝子変異が認められた。
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