2019 Fiscal Year Research-status Report
網羅的遺伝子解析を軸にした網膜色素変性の病態解明と新規治療法開発
Project/Area Number |
19K09929
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大石 明生 京都大学, 医学研究科, 特定病院助教 (50572955)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 網膜色素変性 / 遺伝子治療 / 次世代シーケンサー / stop codon readthrough |
Outline of Annual Research Achievements |
1 遺伝子検査 これまで原因遺伝子が特定できていなかった220人の網膜色素変性患者に対して、全ゲノムシークエンスによる遺伝子解析を行った。結果118人(53.6%)で原因となる遺伝子変異を特定することが出来た。見つかった変異の種類は95であったが、その中に本研究で注目しているpremature termination codonを生じる変異は13種類(13.7%)あり、ここに介入するという戦略の治療対象になりうる患者が一定数いることが確認できた。 2 新規遺伝子同定 近親婚のある家系で、既報の変異が見つかっていない症例がhomozygousに持っていて、アリル頻度の低いものとして、ミトコンドリアリボソームの39Sサブユニットをコードする遺伝子であるMRPL19のバリアントを同定し、ゼブラフィッシュでframeshift変異を入れた個体を作成した。Homozygousに変異を持つF2個体を樹立、6か月齢の時点で眼球の切片を作成し、網膜厚、層構造を評価したが、野生型と比較して明らかな違いは検出されなかった。この結果から今回の患者で見つかったバリアントは残念ながら、偶発的に持っていたものであったと考えている。 3 iPS細胞による治療効果判定 患者由来iPS細胞を視細胞様に分化誘導し、リカバリンやロドプシンなど視細胞のマーカーとなる遺伝子の発現を確認している。一方正常者由来iPSから分化誘導させた細胞との間に明らかな表現型の差を検出できていない。あくまでin vitroの状態であり、徐々に発症、進行する原疾患の特徴がきれいに再現できていないものと考える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実績に述べたように遺伝子解析については予定のサンプルの解析を一旦終えた状態である。現在も継続的にサンプルを収集しており、解析を続けることで本邦での当該疾患の原因遺伝子の分布など様々な治験が蓄積できるものと考える。 新規遺伝子探索について、ターゲットとしていた遺伝子に関しては、これを改変したモデル動物で明らかな表現型が見られず、当初の予想とは異なるが、網膜色素変性とは直接関連のないものという結論に至った。 患者由来IPS細胞による治療効果判定については、依然として評価系が確立できておらず、今後も検討が必要な状態である。
|
Strategy for Future Research Activity |
遺伝子診断については引き続き発端者のサンプル収集を続ける。また正常者データベースやタンパク機能予測ツールを用いても、診断が確定しない患者がまだ全体の5割弱あり、患者家族のサンプル採取を進め、家系内の解析でより多くの症例での診断を目指す。家系によってはそれだけで、新規候補遺伝子の探索も可能になることが期待される。新規遺伝子については、人工知能を活用し、これまでに分かっている原因遺伝子を学習データとして、見つかっているバリアントのある遺伝子の中から、関連性の高いものを選ぶことで新たな候補を探ることを行っている。iPS細胞の実験については、光照射による負荷を与えることで、正常との差を検出することを検討している。ただし直近のパンデミックで京都府にも緊急事態宣言が出た場合、これらの計画は根本的に変更を余儀なくされる可能性がある。
|