2019 Fiscal Year Research-status Report
Evaluation of central visual deficits in GAD KO rats
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19K09935
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Research Institution | Maebashi Institute of Technology |
Principal Investigator |
今村 一之 前橋工科大学, 工学部, 教授 (30203326)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柿崎 利和 群馬大学, 大学院医学系研究科, 助教 (50375531)
柳川 右千夫 群馬大学, 大学院医学系研究科, 教授 (90202366)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 眼優位可塑性 / GABA / 合成酵素 / 最初期遺伝子 / 免疫組織化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
抑制性神経伝達物質GABAの合成酵素には、二つのサブタイプ、すなわちGAD65, GAD67の存在が知られている。本研究においてそれぞれの遺伝子を欠損させたラットを用いて、眼優位可塑性の評価を実施した。 眼優位可塑性は、生後発達初期の感受性期に限り大脳皮質視覚野に特異的に発現する可塑性であり、この間の単眼遮蔽により第一次視覚野の機能構築が大きく変化(遮蔽眼の支配低下、正常眼の支配拡大)することが知られている。生後4週齢のノックアウトラットの一側眼瞼を縫合遮蔽することで2週間の単眼視体験をさせ、視覚刺激する眼と対側眼球網膜の神経活動を遮断するためにテトロドトキシンを注入した。24時間の完全暗室飼育の後、1時間の光刺激を与え、新麻酔下に経心灌流固定を行い抜脳した。申請者らが開発したプロトコルに基づき組織切片を作成し、最初期遺伝子c-fosのタンパク産物に対する特異的抗体を用いた免疫組織化学的染色を施した。本申請研究で独自に開発した画像解析システムを用いて、刺激眼と同側の第一次視覚領第四層における免疫陽性細胞数を計測した。その結果、GAD65遺伝子ノックアウトラットにおいて、遮蔽眼の刺激に対して誘導される免疫陽性細胞数は、野生型と同様に統計学的に有意に低下したが、正常眼刺激により誘導されたそれは、有意な増大を示さなかった。一方で、GAD67遺伝子ノックアウトラットにおいては、遮蔽眼刺激による免疫陽性細胞数の減少も、正常眼刺激による増大も抑制されることが明らかになった。 以上のActivity Mapping 法を用いた解析によりGAD65とGAD67のノックアウトラットでは、眼優位可塑性の阻害様式に明らかな差があること、マウスでは出生致死であるGAD67ノックアウトの方がラットの場合ではより可塑性阻害効果が大きいことが世界で初めて示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度においては、申請者等が開発した眼優位可塑性の組織化学的評価システムを利用して、抑制性神経伝達物質GABAの合成酵素2つのサブタイプについて、眼優位可塑性への関与を証明することを目標とした。 GAD65については、ノックアウトマウスを用いた先行研究が眼優位可塑性の抑制を報告していたが、ラットにおいては不明であったこととGAD67遺伝子については、この実験的欠損がマウスにおいて出生致死であることから、その関与に関しては全く不明のままであった。両分子の機能や局在については、種々の研究手法を用いた報告があるが、生後発達初期の神経可塑性に関する役割については、全く不明であった。今回申請者らが独自に開発してきた眼優位可塑性の評価法を適用して、GABA合成酵素の二つのサブタイプの機能的役割の違いの一端を明らかにすることができた。 また、GAD65とGAD67の役割の相違に関する研究を進める上での手掛かりとなる眼優位可塑性への影響の違いと主要な抑制性神経伝達物質GABAの合成酵素の機能的相違を明らかにするための十分な手掛かりが得られていることで「おおむね順調に進展している」と自己評価するものである。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究により抑制性神経伝達物質GABAの合成酵素二つのサブタイプの遺伝子の発現阻害によって、それぞれ眼優位可塑性が抑制されることが明らかにできた。今後同じ実験を繰り返すことで論文発表に必要な十分なデータ量を得るとともに、今年度は電気生理学的な評価系を導入して、神経細胞の視覚応答についても検討していく。さらに、第一次視覚野神経細胞の視覚応答の相違と可塑性の阻害様式の相違の相関を追求することで、両分子の機能的相違を解明していく。また、浸透圧ミニポンプシステムの視覚野内への埋め込みにより局所的に様々な濃度でGABAを注入する事で可塑性阻害を解除できるかどうかについても検討を行う。この実験で可塑性が回復できれば、それぞれのGADによるGABA合成量の相違について検証するこが可能となる。 電気生理学的手法を追加することで、同一個体で正常眼と遮蔽眼の刺激による視覚野ニューロンの反応の大きさを比較することが可能となり、これまでの組織化学的手法で得られた実験結果を検討することができる。また、野生型のラットとGADノックアウトラットの視覚野ニューロンの反応特性を詳細に比較することで、この分子の機能について新たな知見が得られることが期待される。
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Causes of Carryover |
当初、実験助手、支援者の人件費、謝金を計上していたが、予定者が異動により依頼できず、ある程度の熟練が必要となる作業のため、その後も適切な人材を確保できなかったことが原因である。また、当初情報収集のために参加予定であった学会等がコロナウィルス感染症拡大阻止のために中止となり、出張が取りやめになったことで旅費が執行できなかったことも次年度使用額が生じた理由と考えている。令和2年度には、複数の学会で成果を報告する予定であり、当初旅費予算額の若干の増額が必要となる計画である。また、当初予定していなかったデータ解析用のコンピュータの買い換え等で経費が必要となる可能性があり、次年度物品購入費に合算することを計画している。
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