2020 Fiscal Year Research-status Report
眼内液解析によるフォークト-小柳-原田病の病態解明
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19K09972
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
永田 健児 京都府立医科大学, 医学部附属病院, 専攻医 (00457988)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | フォークト‐小柳-原田病 / 眼内液解析 / ぶどう膜炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)フォークト-小柳-原田病におけるサイトカイン解析 (イ)サイトカイン解析については眼内液と髄液も含めて解析を行っていくが、髄液・前房水ともに採取を進めている。(ロ)眼内液や髄液の結果と臨床経過について検討を行う予定であり、臨床的に生物学的製剤であるTNF阻害薬が必要な症例につきその臨床経過について報告しており、TNFにも注目して解析する予定である。 (2)原因候補の解析 フォークト-小柳-原田病の発症のトリガーとなる原因候補として前房水での検討の前に、予備的検討として髄液中のウイルスDNAの存在の有無を多項目ウイルスPCRで検討した。検討したPCRは全て陰性であり、他の候補を検討している。髄液中の細胞はリンパ球優位であることから、ウイルスを中心に原因候補を拡大して検討するが、アデノウイルス抗原のチェックも行ったが陰性であった。前房水は少量しか採取できない貴重な検体のため髄液での予備的検討の上で前房水の解析を進めていく。 (3)臨床評価項目 前眼部Optical Coherence Tomography (OCT)による毛様体の解析では、発症初期には高率に毛様体剥離が認められ診断に有用である。治療により2週間以内に消失することが多く、2ヶ月以内には全例で一旦消失した。また発症時、毛様体自体も肥厚しており、治療により毛様体厚も減少することが分かった。さらに、フォークト-小柳-原田病の再燃に関する予後因子を検討し、単変量解析では年齢が高いこと、眼症状自覚から初診までの期間が長いこと、ステロイドパルス療法に後発医薬品を使用したことが有意なリスク因子であり、ロジスティクス回帰分析によりステロイドパルス療法に後発医薬品を使用したことが唯一のリスク因子であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)前房水の解析については採取できる量が少なく貴重なサンプルであるため、本疾患において急性期に炎症の比較的高度な部位である髄液を用いて予備的検討を行ったが、当初想定したウイルスの検出は無かった。髄液での結果から前房水での検討は現段階まででは行わず、他の項目を含めた検討を行ってから前房水での検討が望ましいと判断しており、引き続き症例を蓄積中である。 (2)臨床データについては生物学的製剤使用例について論文化した。また、前眼部OCTでのデータについては論文作成可能なデータが得られており、記載を進めていく。 フォークト-小柳-原田病の再燃に関する予後因子の検討は論文作成中である。 以上のように推定した原因微生物の同定には至っていないが、一部は論文化可能なデータもあり概ね順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)フォークト-小柳-原田病は発症初期に感冒様症状を伴うことも特徴の一つであり、これまで検討してこなかったウイルスなどこれまでの検査項目にないウイルスも含めた検討を行う。 (2)サイトカインは髄液を含めたサンプルの症例数を増やして、髄液と前房水の網羅的サイトカイン解析を行う。発症時のサイトカインと再燃例の関係を解析し、ステロイドのみでなく免疫抑制剤や生物学的製剤を含めた治療の最適化を目指す。特に近年TNF阻害薬が有効なこともあり、再燃時のTNF-αの変動も検討する。 (3)これらの結果が出そろったら、サイトカインと前眼部OCTにおける毛様体剥離を含めた臨床所見の重症度との相関関係を解析し、病態の鍵となるサイトカインの解明を目指す。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の流行により、国内・国外を含めたほとんど全ての学会が中止あるいはweb開催となり、学会参加ができず、学会費および旅費が少なかった。 また、同様に大学病院の受診控えもあり、検体の取集がやや少なく、3年目にまとめて解析を行うため。
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