2019 Fiscal Year Research-status Report
低分子量G蛋白質シグナルの破綻に起因する網膜疾患の分子機序の解明
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19K09974
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
松田 孝彦 兵庫県立大学, 生命理学研究科, 客員研究員(研究員) (40313093)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 網膜 / 発生 / 低分子量G蛋白質 |
Outline of Annual Research Achievements |
R-Ras、TC21、M-Rasは「R-Ras subfamily」に分類される低分子量G蛋白質である。R-Ras subfamilyは細胞増殖、分化、形態形成などにおいて重要な役割を果たすことが知られているが、これまでの研究の大半は培養細胞レベルのものであり、臓器・個体レベルでの機能については殆ど判っていない。加えて、R-Ras subfamilyの3分子には機能的な重複があると考えられており、この点が生体内での解析を複雑・困難にしている。そこで本研究では、R-Ras, TC21, M-Rasを1セットとして捉え、これらがマウス網膜の発生・成熟・維持に於いて果たす生理的役割を統合的に理解することを目的とした。 まず、それぞれの特異的抗体を用いた免疫組織学的手法によってマウス眼球内におけるR-Ras subfamily低分子量G蛋白質の局在を調べた。その結果、3分子とも網膜内で発現していたが、それぞれが一部重複しながら独自の発現パターンを示すことが判明した。このことから、3分子は網膜の発生・成熟・維持に於いてそれぞれ異なる役割を果たすことが示唆された。 次に、R-Ras subfamily低分子量G蛋白質の機能を調べるために、生体内エレクトロポレーション法を用いて、発生期のマウス網膜内にR-Ras subfamily発現ベクターを導入して機能獲得実験を行った。その結果、R-Ras subfamilyの強制発現が網膜細胞の分化に影響を与えることが判明した。今後、R-Ras subfamilyによって網膜細胞の分化が制御される分子メカニズムを検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
免疫組織学的解析、ならびに、マウス生体内での機能獲得実験は、おおむね当初の計画通りに進んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、R-Ras subfamilyの強制発現が網膜細胞の分化に影響を与える分子メカニズムを詳細に検討する予定である。また、R-Ras subfamilyに対するshRNAノックダウンベクターを生体内エレクトロポレーション法によって発生期のマウス網膜に導入し、R-Ras subfamilyの機能喪失実験を行う。さらに、ノックアウトマウスを用いた個体レベルでの研究を行う。
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Causes of Carryover |
交付額が申請額よりも減額されたため、当初計画していた設備備品の購入を見合わせた。また、学会参加のための旅費を計上していたが、初年度は学会参加しなかった。そのため、余剰金が生じた。 次年度は、当初計画していた設備備品を予算内で購入出来る目処が立ったため、助成金の繰り越し分を設備備品の購入に充てる計画である。
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