2019 Fiscal Year Research-status Report
フックス角膜内皮ジストロフィの病態におけるmTORシグナルの意義
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19K09983
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
小泉 範子 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (20373087)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | フックス角膜内皮ジストロフィ / 薬物治療 / mTORシグナル / ラパマイシン |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者らはこれまでに、mTOR阻害剤の1種であるrapamycinがフックス角膜内皮ジストロフィ(FECD)の疾患モデル細胞における細胞死を抑制することを薬剤スクリーニングにより見出した。2019年度には、mTOR阻害剤の細胞死抑制の作用機序を検討した。FECD患者より採取した角膜内皮から樹立した疾患モデル細胞において、TGF-β刺激により細胞死を誘導し、mTOR阻害剤(temsirolimus)およびmTORノックダウンのフィブロネクチン産生、小胞体ストレスセンサーおよびカスパーゼ3の活性化への影響をウエスタンブロット法にて評価した。タンパク質合成中に取り込まれるhomopropargylglycine(HPG)についても免疫染色により評価した。また、mTORの活性化により形成されるeIF4E複合体の阻害剤である4E1RCatの疾患モデル細胞に対する影響も同様に評価した。疾患モデル細胞においてTGF-βによりフィブロネクチンの発現が亢進した一方で、temsirolimusおよびmTORのノックダウンによりフィブロネクチンの発現は低下した。同様に、temsirolimusによりタンパク質合成中のHPGの取り込みが抑制された。TGF-βによる小胞体ストレスセンサーの活性化および細胞死はtemsirolimusにより抑制された。また、eIF4F阻害剤はtemsirolimusと同様に、TGF-βにより誘導されるフィブロネクチンの発現亢進、カスパーゼ3の活性化、細胞死を抑制した。以上の結果より、mTOR阻害剤はeIF4F複合体の形成を阻害し細胞外マトリックスの過剰産生を抑制することで小胞体ストレスを抑制し、FECDにおける角膜内皮細胞死を抑制する可能性が示唆された。本研究はドイツエルランゲン大学のFriedrich Kruse教授らとの国際共同研究である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時の計画通りに進捗が得られているため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、TCF4遺伝子におけるCTG繰り返し配列を50回以上有するFECD疾患モデル細胞を用いて、TGFβ刺激に対する反応を調べ、さらにmTORシグナルに対する影響を検討する。また、大阪大学微生物病研究所の伊川正人教授との共同研究として、mTORヘテロノックアウトマウスの作製に着手しており、次年度以降はFECDモデルマウスとmTORヘテロノックアウトを掛け合わすことにより、mTORシグナルがFECDの角膜内皮病変に与える影響を検討する予定である。
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