2020 Fiscal Year Research-status Report
フックス角膜内皮ジストロフィの病態におけるmTORシグナルの意義
Project/Area Number |
19K09983
|
Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
小泉 範子 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (20373087)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | フックス角膜内皮ジストロフィ / 薬物治療 / mTORシグナル / ラパマイシン |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者らはこれまでに,mTOR阻害剤の1種であるrapamycinがフックス角膜内皮ジストロフィ(FECD)における角膜内皮細胞の細胞死を抑制することを,研究室で樹立した疾患モデル細胞を用いた薬剤スクリーニングにより見出した.また,その作用機序として,mTOR阻害剤が角膜内皮細胞における細胞外マトリックスの過剰産生を抑制することで,小胞体ストレスを抑制する可能性を疾患モデル細胞を用いて示した. 2020年度には, FECD患者の角膜内皮組織におけるmTORシグナルの検討を行った.角膜移植予定のFECD患者(32名,年齢69.6±1.6歳)より事前に書面同意を得て,角膜移植時に採取した角膜内皮を含むデスメ膜を用いて研究を行った.コントロールとして正常ドナー角膜(4眼,年齢63.0±13.1歳)を用いた.ウエスタンブロット法により,mTOR,リン酸化mTOR,S6K,リン酸化S6Kの発現を評価した.また我々が既に取得したRNAseqのデータよりmTORに関する分子の発現を調べた.その結果,FECD患者角膜内皮ではコントロールと比較して,mTORは3.20倍(p<0.01),リン酸化mTORは1.92倍(p<0.05),S6Kは1.34倍(p=0.29),リン酸化S6Kは1.82倍(p<0.05)の発現を認めた.mRNAレベルでは,mTOR,S6K,4EBP1の発現レベルはFECD患者とコントロールで有意な差を認めなかった. 以上の結果より,FECD患者角膜内皮では,コントロールと比べてmTORおよびS6Kのリン酸化が上昇しており,mTOR/S6K経路が活性化していることが示された.今後,mTOR/S6K経路の解明はFECDの病態解明に寄与し,創薬ターゲットとして適切であると考えられた.本研究はドイツエルランゲン大学のFriedrich Kruse教授らとの共同研究である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時の計画通りに進捗が得られているため.
|
Strategy for Future Research Activity |
現在,大阪大学微生物病研究所の伊川正人教授との共同研究として,薬剤誘導型のMtor cKOマウスの作製に着手している.すでに Mtor cKOマウスに薬剤を点眼することより角膜内皮においてMtor欠損が正常に起こることをRT-PCRにより確認した.2021年度はMtor cKOマウスをFECD疾患モデルと掛け合わせ,FECD-Mtor cKOマウスを作製する予定である.今後,FECD-Mtor cKOマウスの角膜組織を用いた解析を行い,FECDのin vivoの病態におけるmTORシグナルの関与を明らかにすることでmTORシグナルをターゲットとした新規のFECD治療薬の開発に貢献できると考える.
|