2019 Fiscal Year Research-status Report
Wnt/β-catenin経路を標的とした増殖硝子体網膜症の治療法の開発
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19K09994
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
木許 賢一 大分大学, 医学部, 准教授 (50315339)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保田 敏昭 大分大学, 医学部, 教授 (30205140)
赤嶺 孝祐 大分大学, 医学部, 助教 (60799435)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | Wnt/β-catenin / 細胞外マトリックス / TGF-βシグナル伝達 / 増殖硝子体網膜症 / 網膜色素上皮細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
眼内線維増殖性疾患の薬物治療法の開発は喫緊の課題である。TGF-βによる網膜色素上皮細胞の病的線維性コラーゲンの発現調節やその他の細胞外マトリックスのシグナル伝達や転写調節を解明し治療法を確立する研究は少なく、CBP/β-catenin阻害剤を使用して既に線維化を来した眼内線維増殖性疾患を改善させることができるかを目的とした。今年度は当初予定していた初代培養ヒト網膜色素上皮細胞の培養状態が不安定なため、ARPE-19細胞株を使用した。通常培養群とTGF-β2刺激群およびWnt/β-catenin阻害剤であるICG-001を前処理したTGF-β2刺激群の各3群のRNAシークエンスを行い各群の遺伝子発現の差異を網羅的に解析した。細胞外マトリックスの主成分である各種コラーゲン遺伝子に着目するとTGF-β2刺激群ではI、IV、V、VII、XVI、XVIII、XX、XXV型コラーゲンの発現が有意に上昇し、ICG-001はこの内V、XVIII、XX型コラーゲンの発現上昇を抑制した。次にfibronectinのバリアント発現を見ると正常では発現のないvariant 1、3、8、10、11がTGF-β2刺激で出現するが、ICG-001はこの全てを有意に抑制した。一方、細胞外マトリックスの分解に関与するMMP分子を見るとGF-β2刺激群で上昇したMMP2、MMP3、MMP11の発現上昇をICG-001が有意に抑制した。興味深いことに組織の線維化に深く関与するペリオスチンの発現上昇がICG-001で著明に抑制されており、Wnt/β-catenin阻害剤:ICG-001は増殖硝子体網膜症の補助治療に非常に有効な可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ARPE-19細胞株はやはり初代培養細胞と比較すると少し形質転換を起こしていると考えられるため、初代培養による検証を行いたい。
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Strategy for Future Research Activity |
初代培養がうまくいかなければさらに形質の確立したiPS由来ヒト網膜色素上皮細胞を使用してARPE-19細胞株との差を検証する。同時に網羅的解析を進め動物実験へと進めたい。
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Causes of Carryover |
既に所有してある試薬、培養細胞、実験機器の備蓄があり新規に購入しなかったため次年度使用額が発生した。 今年度は実験の進行とともに新たな実験を行う必要があり当初の計画よりも費用がかさむため適切に使用できると考えている。
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