2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of new artificial dermis with dynamic support structure for preventing a scar contracture and inducing excellent wound healing
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19K10021
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Research Institution | 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター) |
Principal Investigator |
落合 博子 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター), その他部局等, 室長 (60374162)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柚木 俊二 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 開発本部開発第二部バイオ応用技術グループ, 上席研究員 (20399398)
成田 武文 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 開発本部開発第二部バイオ応用技術グループ, 研究員 (20640056) [Withdrawn]
岡 愛子 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター), 聴覚・平衡覚研究部, 研究員 (50795721)
平田 恵理 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター), 聴覚・平衡覚研究部, 研究員 (70795731) [Withdrawn]
大藪 淑美 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 開発本部開発第二部バイオ応用技術グループ, 主任研究員 (80587410)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 瘢痕拘縮 / コラーゲン / 人工真皮 / 皮膚再生 / マウス / 肉芽形成 / 植皮 |
Outline of Annual Research Achievements |
コラーゲンスポンジを基材とした人工真皮マトリクスは国際的に普及し、皮膚欠損創に対する植皮術を実施する前の肉芽形成においてその有用性が実証されている。国内の製品に着目すると、その開発研究が 1996 年に報告され既に製品化から20 年が経過しているが、大きな改善は行われていない。しかし、コラーゲンスポンジの強度が吸水により著しく低下することは本質的な課題として残されており、術後の瘢痕拘縮の要因の1つと考えられている。本研究は、コラーゲンスポンジが示す良好な肉芽形成能(すなわち生体吸収性と組織置換性)を維持しながら耐収縮性を付与する新たな試みと位置付けられる。 人工真皮として用いられているコラーゲンスポンジの内部に吸収性の骨格構造を付与した場合、力学的に支持された足場の効果により瘢痕拘縮が予防されるという仮説を立てた。本研究では、力学試験および小動物を用いたin vivo 実験によりこの仮説を検証することを目的とした。コラーゲン線維を高濃度化し、凍結乾燥により密度の異なる3種類のコラーゲンマトリクス(CM)を作製した。加えて、疎なコラーゲンマトリクス部に緻密なフレーム構造体を複合化したコラーゲンマトリクス(FCM)を3種類作製した。耐荷重性および肉芽形成を阻害しない構造となるように配慮し、実際に耐荷重性が高まっていることを確認した。マウス背部の皮下への埋入、皮膚欠損層への移植、皮膚欠損層へのFCM+植皮を実施し、実験系が異なることによるFCMの吸収の過程や炎症細胞出現数、肉芽形成、瘢痕拘縮について検討した。皮膚欠損層への移植に関してはFCMの耐荷重性の高さと吸収の遅さに比例関係を認めず、また瘢痕拘縮の有意差も認めなかった。今後はFCMの構造を変更し、追加実験を行っていく。また、形成された肉芽と生着した植皮の質の評価のために、免疫染色を実施しており、今後の実験計画の参考としたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
力学試験により、疎なコラーゲンマトリクス部を有する FCM の耐荷重性がフレーム構造体により向上することが明らかになった。コラーゲンスポンジの緻密化が耐収縮性と組織置換の遅延を生じる可能性が示され、疎なコラーゲンマトリクスに緻密なフレーム構造体を複合化した FCM により、優れた肉芽形成能と耐荷重性を併せ持つコラーゲン人工真皮が設計可能であることが示された。 次に、臨床を想定したin vivo 実験に設計したFCMを用い、CM吸収および創治癒過程を検証した。マウス背部の皮膚欠損創にFCMを埋植した部位の組織観察像によると、最も密度の低い 3A では、埋植後わずか1週で分解および細胞・組織の浸潤を認めた。細胞・組織の浸潤性は中密度の 3B でわずかとなり、最も高密度の3C では全く観察されなかった。3C では埋植物の形状(断面が矩形型)もほぼ完全に保たれていた。以上の結果は、FCM の骨格構造が創部において耐収縮力を示すことを示唆している。 続いてFCMと皮膚移植を行ったところ、 FCM使用により植皮は全生着し、植皮の母床形成に有用であることが示された。しかし、肉眼的評価では瘢痕拘縮に関してCM移植との有意差を認めず、埋植部位の組織観察像(HE染色)によると、4日目において全例ですでにコラーゲンが分解して構造が破綻し始めており、特にFCMの構造破壊が早かった。現在免疫染色による組織学的検討を行っており、その結果で追加実験を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
①FCM(コラーゲンフレーム強化人工真皮)4種のマウス背部への移植実験 :ICRマウス背部に皮膚欠損創を作成し、同部位にFCMと次回からの全層皮膚を移植する実験を継続して行う。形成される肉芽の大きさと組織学的変化を検討するためのn数が必要である。マトリクス/ファブリックの残存の程度と肉芽形成の程度を比較、創部へ集積する炎症細胞の種類と数、新生血管、筋線維芽細胞の集積の程度などを組織学的に解析している。上記の結果より最適FCMを作成し、医学評価へと供する。 ②マウス関節可動部位の皮膚欠損・切開創への最適FCM移植実験:マウス背部皮膚欠損創に対して最適FCMを移植、1週間後に植皮術を実施する。シートとメッシュ状に加工した皮膚の移植を実施して比較する。次に、鼠径部(可動部位)皮膚切開モデルへの移植実験を行う。オス・ICRマウスの鼠径部に、屈曲方向に対して垂直に、3cm長さの直線の皮膚全層切開を加える。真皮縫合を行う際に創部真皮皮下にFCMを縫合固定し、その後表皮縫合を行う。病理組織学的、分子生物学的解析を行い、可動部での創収縮抑制効果を実証する。 ③今回使用しているコラーゲンの原料はすでに臨床応用されているものである。ウイルス不活化処理を経ており、抗原性がほとんどないアテロコラーゲンを使用していることから安全性が高い。そのため、組織置換性と力学的支持性を両立した人工真皮の臨床応用は可能であると考えている。
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Causes of Carryover |
今後、疎なコラーゲンマトリクス部に緻密なフレーム構造体を複合化したコラーゲンマトリクス(FCM)の試作がさらに必要であり、それぞれマウスへの移植実験も行う。組織学的検討を行うとともに、論文として投稿、学会発表なども予定している。
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Research Products
(6 results)