2019 Fiscal Year Research-status Report
間葉系幹細胞の生体内挙動解析に基づく機能増強型移植細胞の作製
Project/Area Number |
19K10029
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
高田 仁実 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (80641068)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 間葉系幹細胞 / 脂肪組織 / シングルセル解析 / 下肢虚血 |
Outline of Annual Research Achievements |
間葉系幹細胞は種々の成長因子を分泌し血管再生や創傷治癒を促進する機能を持つことから、難治性炎症疾患や脊髄損傷などへの治療応用に向けた研究が進められている。しかしながら一方で、採取方法の違いや培養条件に違いによる治療効果の違いが指摘されており、間葉系幹細胞の性質を正確に見定めることが重要な課題となっている。本研究の目的は、脂肪組織由来の間質血管細胞群(SVF)を用いて、治療効果が異なる間葉系幹細胞の細胞機能の違いを解明することである。今年度はまず、脂肪から回収した直後の間質血管細胞群(SVF)、接着培養したSVF、浮遊培養したSVF、接着培養の後に浮遊培養したSVFをそれぞれ下肢虚血モデルマウスに移植し、壊死抑制効果を指標として治療効果の違いを検証した。その結果、浮遊培養したSVFおよび接着培養の後に浮遊培養したSVFが最も壊死抑制能が高い可能性が示唆された。次に、各培養条件のSVFを用いてシングルセル遺伝子発現解析を行い、細胞の性質の違いを解析した。その結果、脂肪から回収した直後のSVFには2種類の性質の異なる間葉系幹細胞(CD55+/CD34+細胞、CD55-/CD34+細胞)が存在するが、培養後の細胞はより均一な細胞集団となることが明らかとなった。また、発現変動遺伝子の解析から、浮遊条件で培養した細胞で高発現する48個の分泌性因子および細胞外タンパク質を同定した。これらの中には、神経再生の際に働くことが報告されている分泌性因子が複数含まれることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脂肪から回収した直後の間質血管細胞群(SVF)と、培養条件の異なる3種類のSVFのシングルセル解析を行うことにより、培養前の間葉系幹細胞の性質を解明することに成功した。また、それぞれのSVFを下肢虚血モデルマウスに移植し壊死抑制効果を比較することにより、治療効果の異なる移植細胞のサンプルを準備することに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度はGFPマウスから回収したSVFを用いて、下肢虚血モデルマウスに移植した後のSVFの遺伝子発現を解析する予定である。具体的には、脂肪から回収した直後の間質血管細胞群(SVF)、接着培養したSVF、浮遊培養したSVF、接着培養の後に浮遊培養したSVFをそれぞれ下肢虚血モデルマウスに移植し、移植から1週間後もしくは3週間後にGFP陽性細胞を回収し遺伝子発現を解析することで、in vivoでの間葉系幹細胞の機能を評価する。特に、治療効果が高いことが示唆された浮遊培養条件のSVFにおいて、どのような分泌性因子が発現しているかに注目して解析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
今年度は3月の時点で輸入の遅れが予想された化合物および培養用試薬の購入を見合わせたため、翌年度分に繰り越した。また、2月から3月にかけて共同研究先に出向いて行う予定の実験をキャンセルしたため、使用予定であった旅費および試薬代を翌年度に繰り越している。次年度は購入予定であった試薬を発注するとともに、移動可能になり次第、共同研究先での実験を行う予定である。
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Research Products
(1 results)