2020 Fiscal Year Research-status Report
Identification of cysteine peptidases that assure complete dipeptide production in periodontopathic bacteria
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19K10045
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
根本 孝幸 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 教授 (90164665)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小早川 健 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 技術職員 (10153587)
根本 優子 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 客員研究員 (10164667)
佐々木 実 岩手医科大学, 歯学部, 教授 (40187133)
下山 佑 岩手医科大学, 歯学部, 准教授 (90453331)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 歯周病菌 / ペプチダーゼ / ジペプチジルペプチダーゼ / アミノ酸トランスポーター / ペプチドトランスポーター / DPP4 / DPP7 / 2型糖尿病 |
Outline of Annual Research Achievements |
歯周病菌Porphyromonas gingivalis と2型糖尿病との関係に関する検討 歯周病が2型糖尿病を悪化させることはよく知られているがそのメカニズムはまだ明らかではない。我々は2017年にP. gingivalis DPP4にヒトDPP4同様の血糖値上昇作用があることを見いだして報告している。その後の我々の研究によって、DPP4遺伝子破壊株に高いインクレチン(GLP-1とGIP)分解活性が残存していることが判明した。そこで4種類の P. gingivalis リコンビナントジペプチジルペプチダーゼ(DPP)を用いて検討したところ、DPP7にDPP4を凌ぐインクレチン、および種々の生理活性物質分解活性があることを見いだした。その結果、歯周病と糖尿病や全身性疾患をつなぐ因子としてDPPが関与している可能性が示唆された。ヒトおよび歯周病菌DPP4と共にDPP7の活性を抑制することで、歯周病や糖尿病の患者において相乗的または相加的な予防効果が期待できる。
歯周病菌のジペプチド取り込み機構 ジペプチドを菌体内膜内に取り込む機構として考えられる3種類のアミノ酸・ペプチドトランスポーター(SstT、Pot、Opt)がそれぞれアミノ酸、ジペプチド、トリペプチド取り込みを担当することを示した(Ohara-Nemoto et al., FEMS Microbiol Lett, 2020)。さらに他の2トランスポーター欠損に比べ、ジペプチドトランスポーターPot欠損が菌の成長を著しく遅延させることを明らかにし、本菌のジペプチド取り込みの重要性を確定した。本研究により、歯周病及び二型糖尿病の治療ターゲットとしてDPPとPotが浮上した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
歯周病菌がポリペプチドをジペプチドに分解した後、それをアミノ酸にまで分解してから菌体内に取り込むのではなく、ジペプチドを取り込むという推定は以前からなされていた。我々の従来のDPP5や DPP11の発見もその推定を補強するものであった。しかしながら実際には歯周病菌はアミノ酸トランスポーターも有しているため、ジペプチドの取り込みがどの程度重要かは明らかではなかった。今回我々は、歯周病菌の持つ3種類のアミノ酸、ペプチドトランスポーター(SstT、Opt,Pot)の役割と、ジペプチドトランスポーターPotの重要性を明らかにすることで、歯周病菌の持つDPPとジペプチドトランスポーターがタンパク質分解物の取り込みに最も重要な役割を有することを示すことができた。 また本研究では本来、まだ発見されていないN末端より2番目に親水性アミノ酸を有するペプチドを分解する新規ペプチダーゼを発見することを目的としている。しかし我々はインクレチンというインスリン分泌を促すホルモンの分解にDPP7が深く関わること、そしてその際に、N末端より2番目のアミノ酸がAlaという、疎水性の高くないアミノ酸でも分解すること、さらにDPP7 は引き続きインクレチン分子の4-5残基間、6-7残基間、8-9残基間、10-11残基間も切断することを見いだした 。その結果、未知のペプチダーゼではなく、DPP7に親水性のアミノ酸を切断する能力があることが判明した。 このように当初の構想とは異なるものの、本研究の結果は本来の研究主題である歯周病菌による細胞外栄養タンパク質の完全分解システムの解明につながるものであり、そのため研究は概ね順調に進んでいると結論した。
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Strategy for Future Research Activity |
我々はDPPによるインクレチンの分解過程を研究することで2つの重要な知見を得た。その一つはDPP7には強いインクレチン及び他の生理活性ペプチドを分解する活性があるということである。 二つ目は、これまで知られていなかったDPP7の新たな基質特異性である。具体的には従来より合成基質を用いて知られていたN末端より2番目の疎水性アミノ酸(P1位置)特異的な基質特異性に加えて、親水性のアミノ酸についても効率よく切断できるという知見である。 最終年度ではDPP7のこの新規の基質特異性の分子機構を明らかにする予定である。すでに実験を開始しており、合成基質には存在しない切断点よりC末端側のアミノ酸残基にその鍵があることがわかりつつある。
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Causes of Carryover |
投稿前論文原稿の英文校正を予定していたが論文作成が次年度にずれ込んだため、次年度は英文校正及び投稿費用に充てる。
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Research Products
(4 results)