2021 Fiscal Year Research-status Report
A new function of Shh signaling to control epithelial actomyosin contractility during tooth morphogenesis
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19K10047
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
山中 淳之 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 准教授 (80343367)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中富 満城 産業医科大学, 産業保健学部, 准教授 (10571771)
大峡 淳 新潟大学, 医歯学系, 教授 (40266169)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 歯の発生 / Shh / アクトミオシン細胞骨格 / 歯胚上皮 / マウス / トガリネズミ |
Outline of Annual Research Achievements |
Sonic hedgehog (Shh) は、歯の発生過程の開始期から形態形成期に至るまで、主に歯胚上皮に強く発現するシグナル分子である。これまでに、mRNAの発現パターン、歯胚の器官培養実験、ノックアウトマウスの表現型の解析などから、Shhの役割に関する多くの知見が得られている。しかし、一つにはShhが複数の別のシグナル経路と相互に関連しあっているために、また、Shhが継続して発現するので発生のステージごとに違う機能が考えられるために、歯胚の細胞の挙動に対する具体的な機能は不明なままである。本研究の目的は、歯胚上皮におけるアクトミオシン細胞骨格を介した細胞張力をShhシグナルが調節していることを証明することである。 そのために、マウスの歯胚を材料に、(I) 歯胚の器官培養を利用したShh阻害剤添加実験、(II) 口腔上皮特異的なShh遺伝子欠損 (KO) マウスを使った歯胚の表現型解析、を計画した。2021年度までに、(I)の器官培養実験はほぼ完了した。しかし、 (II)のマウスの解析に関しては、Shhfl/flマウスを導入する予定であったが、Jackson社がlive mouseの提供を中止したため、実行できない状況になった。 そこで、臼歯の形態が異なるマウスとトガリネズミ(スンクス)の歯冠の形態形成を比較することで、Shhの発現の違いが形態の違いに及ぼす影響を調べる実験を追加した。マウスの臼歯では咬頭が丘陵のような鈍頭型を示すのに対して、トガリネズミでは鋭い山頂のような尖頭型を示す。Shh, Wnt10, Edar, Fgf4などの発現パターンの違いを追跡し、細胞接着因子や細胞骨格の局在との関係を調べた。さらに、トガリネズミの歯胚の器官培養を用いたShh阻害実験を行い、咬頭形成におけるShhの機能を調べている。この実験は現在も継続中であるため、研究期間を1年延長した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画では、マウスの歯胚を材料に、(I) 器官培養を利用したShh阻害剤添加実験、(II) 口腔上皮特異的なShh遺伝子欠損 (KO) マウスを使った歯胚の表現型解析、(III) 形態形成期の歯胚上皮における Shhシグナル下流のトランスクリプトーム解析、の3つの実験を計画していた。2021年度までに、(I)の器官培養実験は完了した。しかし、(II)のマウスの解析に関しては、Shhfl/flマウスを導入する予定であったが、Jackson社がlive mouseの提供を中止したため、実行できない状況になった。 そこで、臼歯の形態が異なるマウスとトガリネズミ(スンクス)の歯冠の形態形成を比較することで、Shhの発現の違いが形態の違いに及ぼす影響を調べる実験を追加し、Shh KOマウスの解析に代替させる計画をたてた。マウスの臼歯では咬頭が丘陵のような鈍頭型を示すのに対して、トガリネズミでは鋭い山頂のような尖頭型を示す。まず、マウスとトガリネズミの形態形成期の歯胚におけるShh, Wnt10, Edar, Fgf4, Fgf3などの発現パターンの違いを追跡した。次に、細胞接着因子や細胞骨格の局在との関係を調べた。さらに、マウスとトガリネズミの歯胚の器官培養を用いたShh機能阻害実験を行った。この実験は現在も継続中で、咬頭の形態の違いを生み出す要因を調べている。 研究計画を変更したことにより、追加した実験が現在も継続中であることから、研究期間を1年延長し、2022年度までとした。以上のことから、2021年度において本研究は当初の計画よりやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況の項に記述したように、研究計画(II)のShhのコンディショナルノックアウトマウスの解析に関しては、実行できない状況になったので、その代替実験として、臼歯の形態が異なるマウスとトガリネズミ(スンクス)の歯冠の形態形成の比較を行い、Shhの発現の違いが形態の違いに及ぼす影響を調べることにした。 まず、マウスとトガリネズミの大臼歯の形態形成期におけるShh, Wnt10a, b, Lef1, Edar, Fgf4, Fgf3などの遺伝子発現の違いを調べている。Shh-GFGリポーターマウスと野生型トガリネズミの歯胚を用い、連続組織切片のin situ hybridizationから遺伝子発現の3次元的分布を明らかにしている。また、細胞接着因子Eカドヘリンや細胞骨格アクチン、ミオシンなどの局在も免疫染色で調べている。次に、Shh-GFPマウスとトガリネズミの大臼歯歯胚の器官培養を行い、そこにShhの抑制因子であるcyclopamineを添加する実験を行っている。形態の変化、遺伝子や細胞骨格分子の発現の変化を調べている。この実験は現在継続中である。 2022年度は、この実験を完了させた後、研究データをまとめて論文の執筆にとりかかる予定である。
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Causes of Carryover |
本研究では、上皮特異的なShh遺伝子欠損マウス(Shhfl/flマウス)を使った解析を計画しており、当初の研究計画では、このマウスを導入し解析に使用する予定であった。アメリカのJackson Laboratory社からの購入を予定していたが、このマウスの提供が停止になり導入できない状況となった。そこで、Shhfl/flマウスの導入を断念し、その代替策として、臼歯の形態が異なるマウスとトガリネズミ(スンクス)の歯冠の形態形成を比較することで、Shhの発現の違いが形態の違いに及ぼす影響を調べる実験を行うことにした。この代替実験は2021年度までに完了することができなかったので、研究期間を1年延長した。このため経費の一部を2022年度に繰り越しし、研究継続費用に充てることにした。 2021年度の未使用額228,666円を2022年度に使用する予定である。歯胚の器官培養実験のための消耗品購入費用、および論文執筆のための英文校正費用、論文投稿費用に使用する予定である。
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