2020 Fiscal Year Research-status Report
Phox2B陽性ニューロンを基にした咀嚼運動形成回路の解明
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19K10061
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
中山 希世美 昭和大学, 歯学部, 講師 (00433798)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 富雄 昭和大学, 歯学部, 教授 (70184760)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 咀嚼運動 / Phox2b / 孤束核 |
Outline of Annual Research Achievements |
咀嚼運動はヒトが効率良くエネルギー摂取をするためにも、脳の活性化を促し健康寿命を延ばすためにも重要な運動である。本研究は、Phox2B陽性ニューロンに光遺伝学の技術を用いてアプローチすることで、咀嚼運動の神経回路がどのようなニューロン群から構成されているのかという問いに答えることを目的とする。2020年度には、延髄孤束核のPhox2B陽性ニューロンを活性化する事により誘発されるリズミカルな顎運動に関与する神経核について調べた。実験にはPhox2Bを発現している神経細胞でDNA組換え酵素Creを発現するトランスジェニックラット(Phox2B-creラット)を用いた。孤束核の咀嚼運動誘発部位にアデノ随伴ウィルスpAAV-Ef1a-DIO-hChR2(H134R)-EYFPを注入することで、孤束核咀嚼誘発部位のPhox2B陽性ニューロン特異的に光活性化タンパク質であるチャネルロドプシン(ChR2)を発現させ、投射先である三叉神経上核(SupV)、中間網様核(IRt)、後巨細胞性傍核(DPGi) 、それぞれに光刺激用のカニューレを埋入した。また、咬筋および顎二腹筋に筋電図電極を取り付け、光刺激中の筋電図記録を行った。。IRtとDPGiでは、青色(470 nm, 1-2 mW, 2, 5, 10, 20, 50 Hz, 30 sec)の光刺激により、咬筋と顎二腹筋で交代性のリズミカルな筋活動が誘発された。一方、SupVの光刺激では、20 Hzでの刺激でのみ、わずかにリズミカルな筋活動が見られた。これらの結果から、延髄孤束核のPhox2B陽性ニューロンは、主に、IRtとDPGiを介して、咀嚼様の顎運動の形成に関与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一年目、二年目の計画は概ね終了し、順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、孤束核におけるPhox2Bニューロンの活動が、咀嚼運動の誘発に必須であるかどうかを明らかにする実験を行う。Phox2Bを発現している神経細胞でDNA組換え酵素Creを発現するトランスジェニックラット(Phox2B-creラット)に、アデノ随伴ウィルスAAV-hSyn-DIO-hM4D(Gi)-mCherryの孤束核への注入によりデザイナー受容体であるhM4DiをPhox2Bニューロン特異的に発現させ、そのリガンドである化学物質CNOの腹腔内投与によって孤束核のPhox2B陽性ニューロンの活動を低下させる。この結果、咀嚼運動の抑制が起こるかどうかを調べる。 また、三叉神経上核についても孤束核同様に、咀嚼運動誘発部位の神経細胞の出力先のうち、どこへの出力が咀嚼運動を起こすために有効なのかを調べる。Phox2B-creラットを用い、三叉神経上核にアデノ随伴ウィルスAAV1-Ef1a-DIO-EYFPを注入することで、三叉神経上核における咀嚼誘発部位のPhox2B陽性ニューロンを特異的に蛍光標識し、その投射先を組織学的に解析する。さらに、AAV1-Ef1a-DIO-hChR2(H134R)-EYFPを用いて三叉神経上核のPhox2B陽性ニューロン特異的にChR2を発現させ、投射先のうち主要な部分を光刺激する。これにより、三叉神経上核Phox2B陽性ニューロンのどの脳部位への出力が咀嚼運動の発現に関与するのかを明らかにする。
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Causes of Carryover |
初年度は、実験を加速させるため、実験セットを現在の物に加えてもう一組作ることを計画していた。そのため、光刺激装置の追加購入を計上していた。しかしながら、筋電図記録などその他の装置が追加で入手出来ず、光刺激装置の現段階での増設は意味をなさないため、購入を見送った。さらに今年度は、学会がweb開催になり、旅費の支出もなかった。来年度は、消耗品の在庫も少なく、さらにウィルスベクターの購入も必要となるため、これらの購入を行うとともに、学会発表や論文投稿も行いたい。
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