2020 Fiscal Year Research-status Report
免疫受容体TREM2に着目した炎症性骨破壊のメカニズム解析と治療戦略の検討
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19K10075
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Research Institution | Meikai University |
Principal Investigator |
坂東 健二郎 明海大学, 歯学部, 講師 (50347093)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 紘也 明海大学, 歯学部, 助教 (00635899)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | TREM2 / 筋線維芽細胞 / ケモカイン |
Outline of Annual Research Achievements |
歯周病による歯槽骨吸収の解決の糸口として、抜歯窩の治癒プロセスに注目した。抜歯窩の治癒過程で、線維芽細胞は抗炎症性のサイトカインである TGF-β (Transforming Growth Factor-β) により筋線維芽細胞へ分化誘導される。この細胞は肉芽組織の形成や抜歯窩の収縮など創傷治癒に重要な細胞である。一方で、炎症性サイトカインの発現が高い細胞という一面もある。そこで、マクロファージと筋線維芽細胞の相互作用における TREM2 (Triggering Receptor Expressed On Myeloid Cells 2) シグナルの関りについて研究を進めた。 マクロファージの TREM2 は M1 マクロファージに分化すると発現が下がるが、線維芽細胞にも TREM2 の発現が確認された。しかし、TGF-β によって筋線維芽細胞に分化させても TREM2 の発現に影響はなかった。さらに、抜歯窩における線維芽細胞の状態を詳しく検討するため、3D 組織培養を行った。すると、筋線維芽細胞への分化過程でいくつかのケモカインの発現が高くなることがわかった。詳しく解析すると、CC ケモカインの一つである CCL20 (CC motif chemokine Ligand 20) の濃度が培地中で高くなっており、その由来がマクロファージではなく、筋線維芽細胞であることが判明した。また、遺伝子解析などにより、CCL20 が TGF-β の作用の一部を担い、創傷治癒に働いている事が示唆された。 今後、筋線維芽細胞を LPS などで刺激し、TREM2 がどのように関わっていくか検討していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度より開始した線維芽細胞の組織様 3D 培養は培養期間が約1か月と長い上、手技的な問題もあり、思うように研究が進捗しなかった。また、Covid-19 の世界的な流行により、研究活動が制限された時期があったため、研究の中断を余儀なくされた。しかし、秋頃から、手技的な問題も解消されるようになり、筋線維芽細胞についての新たな知見が得られるなど、立ち止まることなく進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度において、線維芽細胞を 3D 組織様培養で筋線維芽細胞に分化させるシステムが構築できたので、この系を用いて、LPS などで刺激した時、筋線維芽細胞とマクロファージが TREM2 を介して、どのように関わっていくのかを突き詰めていく。また、マクロファージと破骨細胞における TREM2 の機能を解析するため、siRNA などを用いて検討していく。さらに、前年度から取り組んでいる細胞膜貫通ドメインを欠いた組換え体 sTREM2 (soluble TREM2) を精製し、マクロファージ、筋線維芽細胞などの培養系に添加し、その影響を解析していく。
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Causes of Carryover |
当該年度から開始した線維芽細胞の組織様3D培養の培養期間が1か月間と長く、結果が出るのに時間がかかる。そのため、年間を通した段階的な研究経費の支出も研究スケジュールに組み込んでいた。また、長期間の培養中における不測の事態に備え、ある程度まとまった金額を備えておく必要があった。しかし、Covid-19の世界的な流行により、研究活動が制限される時期があったため、研究経費の支出も後ろ倒しになったうえ、米国の共同研究先の大学のロックダウンもあり、当該年度中の全額の支出を断念し、次年度に使用する事とした。 組織様3D培養は培養器具や培地に添加する試薬などが高額であり、サンプル数を絞って、研究を行ってきたが、当該年度の残額を次年度に使用する事により、サンプル数を増やして研究を進める事を計画している。
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Research Products
(1 results)