2023 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロバイオータの表現型可塑性に着目した歯性病巣感染症の病態機序解明
Project/Area Number |
19K10077
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
大坂 利文 東京女子医科大学, 医学部, 准教授 (70514470)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 口腔病原体 / Fusobacterium nucelatum / クォーラムセンシング / バイオフィルム形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
口腔病原体であるFusobacterium nucleatumは亜種レベルにおいて、細菌表現型に影響を与えるシグナル分子のひとつであるauto inducer-2 (AI-2)の産生能が大きく異なる。そこで本研究では、高AI-2産生株であるFusobacterium nucleatum subsp. polymorphum (Fnp)と低AI-2産生株であるFusobacterium nucleatum subsp. fusiforme(Fnf)を共培養した場合の各細菌の表現型の動態を解析した。セルカルチャーインサートを用いて各菌を隔絶した条件下で共培養を行ったところ、Fnpの増殖が促進したのに対して、Fnfの増殖は有意に抑制された。また、Fnfはバイオフィルム形成能を有するが、Fnpとの共培養によってバイオフィルム形成の阻害も確認された。走査型電子顕微鏡でFnFの細胞表面構造を観察すると、単独培養時には細胞表面には遊離前の膜小胞(Membrane vesicle, MV)が多数認められたが、共培養下ではMV様構造は消失していた。つぎに、Fnfのバイオフィルム阻害機構を解明するために、RNAseq解析によって菌体のmRNA発現動態を調べた。その結果、FnPとの共培養がFnfのmRNA発現動態に質的・量的な変化を誘導していることが明らかとなった。共培養によって発現量が減少した遺伝子の一つとして、TnaAが同定された。TnaAは、トリプトファンからインドールおよびピルビン酸への代謝を担う酵素である。そこで、インドール濃度を定量したところ、Fnf単独培養時(72時間)のインドール濃度約170μMであったが、Fnpとの共培養時には30μMと有意に減少していることが確認された。そこで、インドールを添加した条件下でFnpとFnfの共培養を試みたが、Fnfのバイオフィルム形成は阻害されたままであり、Fnfのバイオフィルム形成を阻害した要因の解明には至っていない。
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