2020 Fiscal Year Research-status Report
EBウイルス感染制御を基盤とした新規歯周病予防・治療戦略の確立
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19K10078
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
今井 健一 日本大学, 歯学部, 教授 (60381810)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | EBV / 歯周病 / BZLF1 / 根尖性歯周炎 / 唾液 |
Outline of Annual Research Achievements |
わが国は類を見ない早さで高齢化が進んでいるため、歯周疾患の罹患率の上昇と重症度のより高い患者の増加が見込まれる。病気の進行は歯の喪失に繋がるため、食生活の著しい低下を招く。長年にわたり、ある種の細菌と歯周疾患に関する研究が行われてきたが、未だに病因ははっきりしていない。特に、歯周病は高齢者のみならず、30歳以上の80%が罹患している感染症である。また近年、歯周病が誤嚥性肺炎や糖尿病、早産などの全身疾患の原因となることが明らかとなり、超高齢化社会を迎えるわが国において歯周病対策はより重要となる。 最近、患部には細菌のみならず多くのEBウイルス(EBV)が存在することがわかってきた。EBVによる歯周疾患発症のメカニズムに関する研究は、新たな診断基準の基となる病因論の解明と新規治療法の開発に繋がることが期待される。また、EBVが関与するがんや潰瘍性大腸炎など他の重要な疾患の研究に新たな情報を提示できる可能性もある。しか、EBVが歯周疾患の発症にどのように関与しているのか?この問題に関しては世界的に見ても具体的な報告がない。昨年は、EBVのlatent membrane protein 1 (LMP1)が歯肉上皮細胞から炎症性サイトカインを誘導すること、根尖性歯周炎関連細菌がEBVを再活性化することなどを見出し報告することが出来た。今年度は、実際の歯周病患者の唾液中がEBVを再活性化出来るかを検討した。実験の結果、歯周病患者の唾液中の酪酸は、エピジェネティック制御を介してEBVの再活性化に必須の転写因子:BZLF1の発現を誘導することが明らかとなり、歯周病がEBV再活性化のリスク因子となり得ることが示唆された。本研究の成果は、歯周病のみならず上咽頭癌やバーキットリンパ腫などの発症機序を解明するうえでも重要な基礎的知見を提示していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大きく分けた研究課題の2つとも順調に進んでいると共に、EBVと歯周疾患の関連に関して基礎から臨床的研究まで幅広く発展した。in vitroの研究が進展したのみならず、歯周病患者の臨床サンプルにおいて、唾液中物質、及び病態とEBVの再活性化の関連性を見出すことが出来た。さらに、動物実験も進んでいる。 これらの成果を学会で報告すると共に、一部のデータは論文や総説としても発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度明らかにすることが出来た、唾液によるEBV再活性化であるが、酪酸以外の物質の関与、また酪酸との相乗効果を検討する。加えて、唾液動物実験に関しては、NOGマウスにヒト骨髄由来CD34陽性細胞を移植することでヒト化マウスを得ているが、吸入麻酔下で、ヒト化マウスの歯肉に直接EBVもしくはEBV抗原を投与し組織破壊等を確認後、3次元CT撮影を行い骨吸収の状態、破骨細胞の形成量を評価する。 また、歯周病と病態が非常に似ている関節リウマチにおける、マウスの骨破壊機構をNOGマウスで解析することにより、その経験を歯周疾患研究に還元し研究を加速する。
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Causes of Carryover |
初年度に購入した分子生物、生化学解析関連の試薬等で効率よく研究が行えたため、試薬やシャーレ等の消耗品があまり必要でなくわずかであるが残金が生じた。 繰越金と令和3年度助成金を合わせて、マウスや細胞を用いた実験に必要な試薬、器具等の購入に充てる予定である。
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Research Products
(15 results)
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[Journal Article] Insights on the structural variations of the furin-like cleavage site found among the December, 2019-July, 2020 SARS-CoV-2 spike glycoprotein: A computational study linking viral evolution and infection.2021
Author(s)
Cueno ME, Ueno M, Iguchi R, Harada T, Miki Y, Yasumaru K, Kiso N, Wada K, Baba K, Imai K.
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Journal Title
Front Medicine
Volume: 8
Pages: 613412
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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