2019 Fiscal Year Research-status Report
ストレプトコッカスのバイオフィルム形成阻害剤開発に向けた研究
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19K10082
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Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
矢野 貴人 大阪医科大学, 医学部, 教授 (40239827)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福井 健二 大阪医科大学, 医学部, 助教 (00466038)
石井 誠志 大阪医科大学, 医学部, 講師 (10247851)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ストレプトコッカス / バイオフィルム / 口腔内細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
ストレプトコッカス属細菌は口腔内の常在菌であるが、血中に侵入すると人工弁・弁膜症患者において感染性心内膜炎を引き起こす。これはバイオフィルムによる慢性・難治性感染症の典型例であり、抗生物質による治療は不可能で外科的な弁置換術が必要となる。ストレプトコッカス属細菌においてバイオフィルム形成の開始シグナルの産生と細胞外への輸送に関与するタンパク質がComAである。申請者らはComAの各ドメインの機能・構造の解析を行い、それらの知見をもとに、シグナル産生とバイオフィルム形成を阻害する化合物を得ることに成功している。ComAの構造・機能相関に関してタンパク質科学の観点から最も興味深い点は、ペプチダーゼドメイン(PEP)による前駆体ペプチドの切断、ヌクレオチド結合ドメイン(NBD)によるATPの加水分解、膜貫通ドメイン(TMD)の構造変化に伴うシグナルペプチドの細胞外への輸送という3つの過程が共役しているということである。その共役メカニズムの解明には、これまでのドメインごとの解析ではなく、全長タンパク質を用いた解析が不可欠である。また、より有効なComA阻害剤の探索には、PEPドメイン単独ではなく、全長タンパク質を用いたスクリーニングが必要である。 本年度は、まず、Streptococcus mutansとS. pneumoniae由来の全長ComAタンパク質のin vitro発現系を、コムギ胚芽抽出物による膜タンパク質の無細胞タンパク質合成システムを用いて構築した。リポソームに発現した全長ComAタンパク質を部分精製し、ペプチダーゼ活性とATPase活性を測定したところ、両活性をもっていることが確認できた。現在、全長ComAタンパク質の機能解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ComAタンパク質は、一般的に発現の困難な膜タンパク質である。Native構造をもった全長タンパク質の発現が可能であるかが研究の第一関門であったが、in vitro発現系を構築することにより、活性を有する全長タンパク質を発現することができた。それにより、全長ComAタンパク質の機能解析も順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在は、部分精製した全長ComAタンパク質を実験に用いているが、今後、さらに精製純度の高い全長ComAタンパク質を得るための精製系を確立する。また、精製ComAタンパク質の輸送機能を解析するための、リポソーム再構成系の構築を行う。将来の構造解析のためには、より多量の精製タンパク質を必要とする。そのために、in vitro発現系のスケールアップを進めていく。
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Causes of Carryover |
本年度は研究代表者、研究分担者ともに学会に出席することができず、旅費が発生しなかった。次年度はタンパク質のin vitro発現系をスケールアップする計画であり、そのための試薬類購入の費用が本年度より増える予定である。次年度使用額をその増額分に充てる計画である。
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