2019 Fiscal Year Research-status Report
微生物・細胞内共生現象の解明とその破綻に起因する日和見感染発症機構の解析
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19K10088
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
高橋 一郎 広島大学, 医系科学研究科(歯), 教授 (20206791)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 微生物・細胞内共生 / マクロファージ / S. maltophilia / smlt2713 / IL-10 / 粘膜免疫 / 自然炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は粘膜表層とは異なる微生物【Alcaligenes(小腸)とS. maltophilia(大腸)】を粘膜内免疫細胞に見出し、これら微生物の消化管免疫細胞への共生的持続感染が腸内環境の恒常性・炎症制御に寄与することを明らかにした(Takahashi, et al., Int. Immunol., 2020)。S. maltophiliaは大腸粘膜常在マクロファージ(Mφ)内に持続感染している。組織常在Mφは制御性T細胞(Treg)とならんで免疫学的恒常性の成立・維持に必須の免疫細胞である。Takeda (Ueda, et al., Int. Immunol. 2010)、Pabst (Hadis, et al., Immunity 2011)らの研究から、大腸常在F4/80+CD11b+ MφはIL-10の産生を介して、Treg分化・生存、さらにTh1/Th17細胞のアナジー化を誘導し、通常無害な腸内細菌や食餌性抗原に対する負の免疫応答に寄与することが明らかにされている。 これらを踏まえ我々はS. maltophiliaのMφ内持続感染を可能にする共生因子の探索を行い、smlt2713を見出した。smlt2713欠損S. maltophilia株ではマクロファージ内での共生的持続感染は維持されず、マクロファージ細胞死とS. maltophilia変異株の細胞外への移行が観察される。さらにsmlt2713遺伝子導入MφをCD45RBhighT細胞大腸炎モデルへ適応すると、腸炎の重症化が抑制された。本因子は新規創薬候補として国内特許を取得(特許5821128号)。 令和元年度はsmlt2713を基点としたS. maltophiliaの細胞(Mφ)内共生現象を分子レベルで詳細に解明することをめざし、smlt2713に対する宿主細胞標的分子の探索研究を中心に実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.smlt2713のIL-10分泌誘導機構の解明;①smlt2713遺伝子を組み込んだHaloTag・pFN22Kを導入したマクロファージ(BMDM)のサイトカイン(IL-1, IL-6, TNF, IL-10)分泌をELISAで検討。smlt2713遺伝子導入BMDMにおいてIL-10の分泌が著しく亢進することが明らかになった。②smlt2713刺激BMDMでのIL-10発現に関わるPRRs分子探索:TLR2/4/9 KO、MyD88 KO BMDMを用いたIL-10産生ELISA解析から、smlt2713刺激BMDMのIL-10産生はMyD88を介すことが明らかに。またsmlt2713刺激C57BL/6 BMDMのFACS解析の結果から、smlt2713刺激によってCX3CR1ならびにCD169の発現が亢進することが明らかに。④各種TLR遺伝子導入HEK293レポーターアッセイを用いてsmlt2713を認識するTLRを検討し、smlt2713はTLR2/TLR4によって認識されることが明らかに。 2.smlt2713標的分子の探索;smlt2713架橋FG NHSビーズとBMDMから調製した細胞ライゼートとを反応させ、smlt2713に会合する分子のプロテオーム解析(LC-MS-MS)を行った。その結果smlt2713は、アクチン、Arp2, Arp3, ゲルゾリン、ビメンチンと会合することが明らかに。 3.smlt2713保有・欠損S. maltophilia株感染BMDM・ミトコンドリア酸素消費解析;smlt2713保有S. maltophilia株感染BMDMでは、好気的解糖、脂肪酸酸化に依存したミトコンドリア酸素消費量の上昇が観察された。またsmlt2713刺激BMDMの酸素消費能を解析し、好気的解糖・脂肪酸酸化によるミトコンドリア酸素消費能の減弱が観察された。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナ感染症拡大に伴う研究活動の制限のため、当初予定していた協力研究機関での①共生因子に対する生体側標的分子欠損マウスの作製、②微生物由来の新規脂質性共生因子の探索などの研究計画を実施することが事実上不可能になった。令和2年度以降は研究代表者の所属する機関内での自己完結型研究活動を中心に、これまでに得た研究成果のさらなる発展をめざす。まず初年度の成果をふまえ、S. maltophilia細胞内共生現象を宿主マクロファージ・ファゴゾームでの初期分子間相互作用、ついで細胞質での後期分子間相互作用の順に詳らかにしたい。また共生因子smlt2713の臨床医学有用性については、劇症性脂肪肝炎モデルを用いて、生体エネルギー論的な観点から探求していく。1.ファゴゾーム内での共生的感染成立機構;共生的感染成立初期過程、S. maltophilia smlt2713分泌→TLR2/TLR4/MyD88による認識→IL-10産生の亢進・M2マクロファージに特徴的形質の獲得・ミトコンドリア酸素消費量の亢進に至るシグナル伝達経路、PI3K-AKT-mTOR経路に注目して解明。2.細胞質内での共生的持続感染成立機構解明:後期持続感染相における、宿主マクロファージでのmTOR活性化状態、またmTORと相反するAMPKの活性化状態、さらにミトコンドリアの動態(integrity/biogenesis, mitophagy)等をsmlt2713-IL-10、細胞質病原体認識センサー、あるいはアクチン、ビメンチンなどの細胞骨格タンパクとの相互作用と関連付けて明らかにしていく。3.創薬を念頭に置いた共生因子smlt2713の臨床医学的有用性の検討:LPS誘導型劇症性脂肪肝炎モデルを用いて、smlt2713の炎症制御作用を、宿主マクロファージの代謝要求性に焦点を当てながら明らかにする。
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Causes of Carryover |
令和2年度使用額(66537円)が生じた理由は、新型コロナ感染症拡大の影響を受け、令和2年3月に予定していた共同研究が実施不可能になったことによる。したがって令和2年度は、この金額と合わせた97万弱円の年度予算を、当初の計画通りの予算執行を予定している。
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[Journal Article] Persistent colonization of non-lymphoid tissue-resident macrophages by Stenotrophomonas maltophilia.2020
Author(s)
Takahashi I, Hosomi K, Nagatake T, Toubou H, Yamamoto D, Hayashi I, Kurashima Y, Sato S, Shibata N, Goto Y, Maruyama F, Nakagawa I, Kuwae A, Abe A, Kunisawa J, Kiyono H.
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Journal Title
International Immunology
Volume: 32
Pages: 133-141
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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