2019 Fiscal Year Research-status Report
口腔内細菌の経口投与によるⅠ型糖尿病ならびに食物アレルギーの抑制効果の解明
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19K10096
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Research Institution | Asahi University |
Principal Investigator |
片岡 嗣雄 朝日大学, 歯学部, 講師 (60451390)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 口腔内細菌叢 / 糖尿病 / 食物アレルギー / 自己免疫疾患 / 常在細菌叢 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、1型糖尿病モデルマウスを用いて、Ⅰ型糖尿病の発症とともに特定の細菌が口腔内で増加することを明らかにした。Ⅰ型糖尿病を自然発症するモデルマウスであるNOD/ShiJclを用い、糖尿病の発症前と発症後(随時血糖値600mg/dl以上)それぞれのマウス群の口腔内細菌を比較した。滅菌綿棒を生理食塩水に浸してマウス口腔内を拭い、それをサンプルとして、まずBHI寒天平板に播種したところ、Ⅰ型糖尿病発症後のマウスで有意に多くのコロニーが生成した。この結果は、Ⅰ型糖尿病の発症によって口腔内細菌が有意に増加したことを示すものである。一般的に、マウスの糞便ならびに口腔内からは乳酸桿菌が検出されることが知られているため、次に、この増加した菌が乳酸桿菌かどうかを調べた。上記のマウス口腔内サンプルを乳酸桿菌の選択培地(LBS寒天平板)に播種して嫌気培養したところ、糖尿病発症後のサンプルのみ複数のコロニーが生成した。これらのコロニーを構成する細菌が乳酸桿菌であるかどうかを明らかにするために、これらのコロニーを構成する細菌から遺伝子を抽出し、乳酸桿菌属に特有の遺伝子配列を基に作製したプライマーを用いてPCRを行った。その結果、これらのコロニーを構成する細菌がすべて乳酸桿菌属の細菌であることが明らかになった。以上のことから、Ⅰ型糖尿病の発症によって口腔内で乳酸桿菌が増加することが示された。現在は、これらの乳酸桿菌を培養し、糖尿病発症の促進または抑制にどのような効果があるのかを調べている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者が2019年8月をもって昭和大学を退職し、同年9月に朝日大学に着任したため、実験環境の準備に時間を要した。しかし現在では、実験に使用するマウスならびに試薬類も揃い、Ⅰ型糖尿病の発症に関与する口腔内細菌の同定と解析が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はまず、Ⅰ型糖尿病発症マウスから単離した乳酸桿菌が、糖尿病発症とどのように関連しているかを明らかにする。そのため、単離した乳酸桿菌をⅠ型糖尿病発症前のマウスに投与し、発症にどのような影響があるのかを解析する。また、乳酸桿菌投与マウスの腸管粘膜固有層のリンパ球を解析し、アレルギーを起こすTh2応答に偏っているかどうかを明らかにする。さらに、食物アレルギーモデルマウスを作製し、アレルギー症状に乳酸桿菌がどのような影響を及ぼすのかを明らかにする。
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Causes of Carryover |
研究代表者は2019年8月をもって昭和大学を退職し、同年9月に朝日大学に着任したため、日常業務の切り替えに時間を要し、研究を中断せざるを得ない時期があったためである。 しかし現在では、研究環境の準備も整ったので、2019年度には購入できなかったマウスや試薬類を当初の計画通り購入し、研究の遅れを取り戻していく予定である。
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