2020 Fiscal Year Research-status Report
口腔内細菌の経口投与によるⅠ型糖尿病ならびに食物アレルギーの抑制効果の解明
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19K10096
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Research Institution | Asahi University |
Principal Investigator |
片岡 嗣雄 朝日大学, 歯学部, 講師 (60451390)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 口腔内細菌叢 / 糖尿病 / 食物アレルギー / 自己免疫疾患 / 常在細菌叢 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、食物アレルギーモデルマウスの糞便中で最も多かったCitrobacter属細菌が、どのようにしてアレルギー症状を増悪させるサイトカインであるIL-33の発現を誘導するかを明らかにした。C. koseriJCM1658の生菌は、マウス樹状細胞株DC2.4においてIL-33発現を他の腸内細菌より強く誘導したが、それは、本菌が他の腸内細菌より多くのATPを産生しており、そのATPがP2X7レセプターを介してIL-33発現を誘導していたからだということを示した。その一方、本菌から抽出したLPSはToll-like receptor 4シグナルを介してIL-33の発現を抑制していた。以上のことから、C. koseriは、多量にATPを産生してIL-33発現を誘導することでアレルギー症状を増悪するが、その死菌から遊離したLPSは症状を抑えている可能性が示された。この結果はJournal of Medical Microbiology誌に発表した(J Med Microbiol. 2021 Mar;70(3). doi: 10.1099/jmm.0.001303.)。さらに、ストレプトゾトシンの腹腔内投与によって作成したⅠ型糖尿病モデルマウスに、口腔内細菌のひとつであるRothia dentocariosa生菌を生理食塩水に懸濁し、継続的に5週間の経口投与を行ったところ、糖尿病発症群マウスと比べて血糖値の有意な低下がみられた。R. dentocariosaは病原性の詳細が明らかでなく、健康な口腔内から分離されることが多いものの、全身疾患への関与も不明な口腔内細菌である。現在は、この菌の血糖値低下作用の詳細について解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者が、当該研究課題を申請した時点で勤務していた昭和大学ではなく、朝日大学に研究活動拠点を移したため、特に口腔内細菌の生菌投与を行う感染実験の環境整備に、当初は予想していなかった時間がかかった。現在は、実験環境も整い、口腔内細菌の生菌を用いた実験も行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はまず、Ⅰ型糖尿病モデルマウスに口腔内細菌の生菌投与を行い、症状の改善がどの程度見られるかを明らかにする。次に、各種口腔内細菌に特有の代謝産物を分離抽出し、その代謝産物の経口投与によっても症状の改善が見られるかどうかを確認する。また、これらの生菌ならびに代謝産物を食物アレルギーモデルマウスに経口投与し、アレルギー症状の改善が見られるかどうかを、血中の抗原特異的IgE濃度の計測や腸管粘膜固有層のリンパ球解析によって明らかにする。
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Causes of Carryover |
感染実験の申請と環境の整備に時間がかかり、予定していたマウスならびに実験に使う試薬類の購入が遅れたため次年度使用額となった。現在は、実験環境の整備は完了している。
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Research Products
(4 results)