2020 Fiscal Year Research-status Report
IgA腎症患者の口腔検体と腎生検・摘出扁桃検体の歯科ー腎臓内科による学際的検討
Project/Area Number |
19K10098
|
Research Institution | Seirei Christopher University |
Principal Investigator |
三崎 太郎 聖隷クリストファー大学, 看護学部, 臨床教授 (20464125)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
仲野 和彦 大阪大学, 歯学研究科, 教授 (00379083)
長澤 康行 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (10379167)
仲野 道代 (松本道代) 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (30359848)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | S. mutans / う蝕原生細菌 / IgA腎症 / 透析 / CKD / 慢性腎臓病 / 石灰化 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度1年間の研究報告実績を記載する。 ●SDラットの頸静脈に、IgA 腎症患者唾液中より分離したCnm陽性S. mutans を投与し、IgA腎症様の腎炎が誘導されるか検討を行った。【結果】45日後に摘出した腎臓の糸球体において、メサンギウム細胞の増加が軽度認められ、IgA およびC3 の沈着が認められた。電子顕微鏡では、メサンギウム領域にEDDを認めを認めた。【結論】Cnm 陽性S. mutans が血液中に侵入することにより、IgA腎症様の腎炎が誘導される。以上はClinical and Experimental Nephrology 2020に報告した。 ●Cnm陽性S. mutansをラット口腔に定着しう蝕を誘発させるモデルにおいて、IgA腎症様腎炎誘導の検討をした。SDラットを用いて、Cnm陽性S. mutansの定着を行い32週間後に腎臓組織を検討した。【結果】腎メサンギウム細胞・基質増殖を認め、IgA および C3 の沈着が認められた。電顕ではメサンギウム領域にEDDを認めた。【結語】Cnm陽性S. mutans株の口腔感染はIgA腎症様の腎炎を起こす。以上はScientific Reports 2021に報告した。 ●透析患者のう蝕は大動脈の石灰化と関連していると仮説を立て、透析患者80人の大動脈石灰化indexをCTより割り出し、DMFT(う蝕経験指数)、臨床データの関連と2年後の死亡との関連を検討した。【結果】回帰分析においてDMFTと大動脈石灰化indexは相関を認めた。大動脈石灰化indexは有意に死亡と関連した。【結論】透析患者では、う蝕は大動脈石灰化と関連しており、間接的に予後に関連している可能性がある。以上はClinical and Experimental Nephrology 2021に報告した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)唾液検体における標的口腔細菌種の分布と IgA 腎症の病態との関連の検討(前向き研究)、2)齲蝕・歯周病の程度とIgA腎症との関連の検討、3)標的口腔細菌種とIgA腎症以外の慢性腎臓病との関連の検討(前向き研究)、4)cnm 陽性S. mutans株とIgA腎症との関連についての病理的(腎生検、扁桃)検討、と以上の4本の柱で研究を進行させている。 1)-3)の前向き研究もエントリーが終了しており、唾液検体の菌の分析などを精力的にすすめている。前向き研究には一定時間経過をみる必要があり、今後結果確認予定である。ここまでの2年間で、患者の摘出扁桃を用いてcnm 陽性S. mutans株が扁桃を介してIgA腎症に関連していること証明しScientific Reportsに報告したことや、透析患者のう蝕と動脈硬化が関連していることをPlos Oneなどに報告し、う蝕やcnm 陽性S. mutans株が腎疾患と関連していることの報告を合計5報英語論文で報告できており、研究は順調に推移している。 それぞれの課題が進行しているのも、”口腔疾患とIgA腎症などの腎臓病が関連している”という仮説が事実であるため、結果が伴ってきているものと考えている。研究はそれぞれ順調に進行し、データ抽出や統計的な有意差も確認できており、今後さらに学会発表や英語論文化を進めていくなど、社会還元を行っていく方針である。
|
Strategy for Future Research Activity |
う蝕と歯周病は歯科の二大疾患であり、う蝕原性細菌と歯周病原性細菌によってそれぞれ引き起こされる。う蝕原性細菌は主にStreptococcus mutansであり、歯周病原性細菌は複数知られており、特にPorphyromonas gingivalis、Treponema denticolaやTannerella forsythia の3種類がred complexと呼ばれ、歯周病原性の強い代表的な菌種である。 現在まではう蝕原性細菌を中心に分析を進めていたが、今後は、歯周病原性細菌、特にred complexとIgA腎症やCKDとの関連についても検討を進めていく。臨床研究のデータも蓄積されており、今後論文化を進めていく。また、末期腎不全である透析患者では、健常者に比べてう蝕が重篤であり、そのことが動脈硬化と関連している可能性があることが分かった。そこでう蝕と予後との感染についても前向きに検討中である。さらに、腎生検を行う患者をエントリーし、唾液の口腔細菌の分析を進め、腎の様々な疾患と、口腔細菌との関連を検討し、さらに前向きに腎予後との関連の検討を進めている。S. mutansとIgA腎症の関連ははっきりしてきたため、動物モデルを用いてメカニズムの検討もさらにしていく方針である。
|
Causes of Carryover |
前年度論文投稿費などで予定していた分の残金があり、英文構校正費や投稿費に今後使用予定です。研究は順調に進んでおり、今年度分も予定通りに研究費を使用予定です。
|
-
-
-
[Journal Article] Intravenous administration of Streptococcus mutans induces IgA nephropathy-like lesions2020
Author(s)
Shuhei Naka, Misaki T, Wato K, Ito S, Nagasawa Y, Nomura R, Otsugu M, Matsumoto-Nakano M, Nakano K, Kumagai H, Oshima N
-
Journal Title
Clinical and Experimental Nephrology
Volume: 24(12)
Pages: 1122-1131
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-