2020 Fiscal Year Research-status Report
副甲状腺ホルモンの骨形成促進作用を仲介する骨細胞由来の骨形成促進因子を同定する
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19K10114
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Research Institution | Meikai University |
Principal Investigator |
佐藤 卓也 明海大学, 歯学部, 准教授 (00316689)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林田 千代美 明海大学, 歯学部, 助教 (40710900)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 骨細胞 / 副甲状腺ホルモン / サイトカイン |
Outline of Annual Research Achievements |
副甲状腺ホルモン(PTH)はin vivoでの投与で、破骨細胞形成を促進する一方、骨芽細胞の分化促進・活性化をし、結果的に骨形成を促進する。本研究では、これらPTHの作用を担うと考えられる骨細胞由来の因子の探索を目的としている。これまで、PTHが骨細胞を介して破骨細胞形成を促進するサイトカインの候補を1つ見出し、その分析を行ってきた。しかし現在までに、そのサイトカインがPTHの破骨細胞形成促進作用を担っていることを明確に示すには至っていない。 一方、研究当初の計画であるマイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析と、より定量性の高いreal-time RT-PCR法によるマイクロアレイ解析結果の検証を行ってきた。しかし必ずしもマイクロアレイ解析の再現性が高くなかったため、より定量性・再現性が高く統計処理が可能なRNA-seq解析法を用いた網羅的遺伝子発現解析を行うこととした。骨細胞培養系の改良を進めた結果、RNA-seq解析法を複数回行うための十分量のmRNAを得られるようになった。さらに、骨細胞がPTHに反応し分泌する因子を蛋白質レベルで網羅的に解析が可能な量の骨細胞培養上清も得られるようになった。そこでサイトカインに焦点を絞り、骨細胞培養上清について、308種類のサイトカインを網羅した抗体アレイを用い解析した。その結果、骨細胞がPTHに反応し産生を促進、または抑制するサイトカインを複数、蛋白質レベルで見出した。これらの中には、骨細胞による産生が知られていたが、PTHによる産生調節が知られていなかったもの、また骨細胞による産生すら知られていなかったものが含まれていた。この知見は、RNA-seq解析データと合わせることでパスウエイ解析の精度を高め、本研究の目的であるPTHによる骨細胞を介した骨代謝調節作用の解明に役立つ。また、骨細胞の未知の作用の発見につながる可能性もある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画では、マイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析およびパスウエイ解析を行い、PTHによって骨細胞による発現が調節される遺伝子で、骨形成を促進する可能性のある遺伝子・遺伝子産物の同定がある程度進んでいる時期である。しかし、マイクロアレイ解析結果のreal-time RT-PCRによる確認が進まず、候補遺伝子の同定が遅れている。解決法として、骨細胞の培養をさらに複数回行いマイクロアレイ解析の数を増やすことを考えたが、2020年4-7月にかけて登校自粛、オンライン教育のための準備があり培養がほとんどできなかった。8月以降、ある程度の研究活動が可能となり骨細胞の培養を再開したが、購入した試薬(コラゲナーゼ)のロット等の違いにより、培養が期待通りに進まなかった。この点を考慮した骨細胞培養法の改善を行う必要が生じるなど、計画には無かった事態となった。しかし培養法の改良の結果、骨細胞の培養効率が高まり、マイクロアレイ解析や、複数回のRNA-seq解析が十分行える量のRNA回収が可能となった。また高密度での骨細胞培養が可能となったため、培養上清中の蛋白質を抗体アレイを用いて網羅的に解析することが可能となった。実際に抗体アレイによる解析を行い、PTHによって産生調節される骨細胞由来のサイトカインをいくつか同定した。これらの理由から、本研究課題の進捗状況は、やや遅れていると評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はマイクロアレイ解析ではなく、RNA-seqを用いた網羅的遺伝子発現解析を3~4回行う。複数回行うことによって、ある程度信頼性のある統計的処理が可能となる。本研究課題の重要な点は、遺伝子発現の網羅的解析によってPTHにより産生調節される因子を同定することであるが、網羅的解析結果を統計処理・有意差検定を行うことで、PTHによって産生調節がなされる因子を確実に同定する。このデータと抗体アレイで得られたデータを合わせてさらにパスウエイ解析を行い、骨芽細胞に作用して骨形成を促進する因子の候補を絞込む。絞り込まれた因子について骨芽細胞培養系を用い、その骨形成促進作用の有無を調べ、骨形成促進作用をin vitroで確認する。確認された因子については、マウス大腿骨欠損モデルを用いて、in vivoでの骨形成促進作用の有無を検討して行く。 もし骨形成を促進する因子候補が同定されなかった場合、破骨細胞の形成調節を行う因子の絞込みを行い、破骨細胞形成への作用をin vitroで検証するなど、PTHの骨細胞を介した破骨細胞形成調節を担う因子の同定を行う。
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Causes of Carryover |
結果の精度に疑問が生じたため、価格が高いマイクロアレイ解析を予定通り行わなかった。一方、当初の計画には無かった抗体アレイ解析を行った。マイクロアレイ解析と抗体アレイ解析の価格の差が次年度使用額がプラスとなった主な理由である。次年度は、マイクロアレイ解析に変え、RNA-seq解析を行い、さらにパスウエイ解析を行う計画であり、次年度の助成金と合わせて使用する予定である。
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Research Products
(1 results)