2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of Tooth Wear Repair and Progress Restraint Method using Er:YAG Laser Deposition Technique
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19K10142
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
本津 茂樹 近畿大学, 生物理工学部, 非常勤講師 (40157102)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | Tooth Wear / エナメル質修復 / Er:YAGレーザー / ハイドロキシアパタイト膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
酸蝕、咬耗、摩耗という非細菌性の歯質の欠損であるTooth Wearや、咬合応力ひずみによるくさび状欠損やエナメルクラックは第3の歯科疾患として大きな問題となっている。しかし、これらの有効な治療法はまだ確立されていない。このような中で、新しく開発したEr:YAG パルスレーザー堆積(Er:YAG-PLD)法がこれらの歯科疾患に対して有用であるかどうかを調べることにした。 2019年度では、①人工酸蝕歯・小窩裂溝模擬歯によるエナメル質修復効果の評価、②歯質上の堆積膜の固着強度の評価、③エナメルクラックモデル歯を用いたクラック封鎖効果の評価を行った。①に関しては、エナメル質欠損モデルとしてウシ抜去歯に小窩を形成したものを用い、Er:YAG-PLD法でハイドロキシアパタイト(HAp)膜を堆積した。堆積膜とエナメル質の界面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察、また堆積膜の硬度をビッカース試験機で評価した。その結果、小窩が堆積膜によって完全に封鎖されていること、また成膜91日後の膜硬度は50HVに達することがわかり、歯科用レジンを大きく上回っていた。②に関しては、引張り試験機を用いた。歯質上の堆積膜の固着強度は約4 MPa程度であった。試験後のロッド接着部のSEM観察より、引張りジグロッド部分に堆積膜が残存していることから、凝集破壊が生じたと考えられ、実際の固着強度はこの値よりさらに大きいことがわかった。③に関しては、ウシ歯のマイクロクラックモデルを作製し、上記と同様にEr:YAG-PLD法を用いてHAp膜をクラック部に堆積し、その後にマイクロクラック部分の断面をSEMを用いて観察した。その結果、堆積膜がクラック表層からその内部まで入り込みマイクロクラックを完全に封鎖していることを確認した。 以上の結果はEr:YAG-PLD法が新規歯科治療として有用であるることを示すものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Er:YAG-PLD法によるエナメル質の修復結果として、現在の治療に用いられているレジンよりも高い硬度でエナメル質の小窩欠損を封鎖・修復できることがわかった。また、治療法が未だ確立されていないマイクロクラックさえ、Er:YAG-PLD法によるHAp堆積膜によって封鎖・修復できることがわかった。歯質上の堆積膜の固着強度はレジンに比べ小さかったが、歯質と同素材による修復のため、口腔内の脱灰・再石灰化により強度を増すものと思われる。小窩裂溝のシーラント効果についても実験を進めており、研究は順調に進展している。 おおむねとしたのは、当初2019年度に予定していた、くさび状欠損モデル歯におけるエナメル質修復効果の評価が、レーザーのメンテナンスと緊急事態宣言による大学封鎖の影響で行えなかったためである。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度はまず、2019年度やり残したくさび状欠損モデル歯におけるエナメル質修復効果の評価をまず行う。続いて、申請書の計画通りに、Tooth wear抑制効果の付与技術の確立として、①フッ素含有HAp膜の作製とその耐酸性の評価、②堆積膜へのフルオールゼリー塗布による耐酸性向技術の確立を行う。①に関しては当初フッ化アパタイトとα-TCP粉末との混合ターゲットを考えていたが、エナメル質との固着特性の悪さがあるため、α-TCP粉末とフッ化カリウム粉末の混合ターゲットを考えている。②に関しては、すでにフルオールゼリー塗布は膜の硬度を上昇させることを確認しており、耐酸性にも効果があると思われる。耐酸性の評価はICP-MS法で行う予定である。
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Research Products
(7 results)