2022 Fiscal Year Annual Research Report
放射線う蝕の治療法の確立に向けたセルフエッチング接着システムの基礎的研究
Project/Area Number |
19K10149
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
松崎 久美子 (田中久美子) 岡山大学, 医歯薬学域, 助教 (50550802)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉山 昌宏 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (10201071)
島田 康史 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (60282761)
松崎 秀信 岡山大学, 大学病院, 助教 (70325124)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 放射線性う蝕 / 象牙質脱灰抑制 / 象牙質知覚過敏抑制剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
頭頸部がんの放射線治療を受けた患者は、唾液の減少に伴う口腔乾燥、食生活の変化などにより、う蝕に罹患しやすい。そこで、放射線性う蝕に対する修復処置を想定し、象牙質被着面の接着に関する基礎的研究を行った。まずは放射線性う蝕を想定した人工脱灰象牙質に象牙質知覚過敏抑制剤を応用することが被着面の強化につながるか検証した。2021年度の研究により、使用した2種類の象牙質知覚過敏抑制剤は、象牙質被着面のごく表層、あるいは被着面のやや内部で脱灰を抑制することが示された。 この結果を踏まえ、2022年度は、放射線を照射したヒト抜去歯を用いて、象牙質被着面の検証を行った。すなわち、ヒト抜去歯に70Gyの放射線を照射し、象牙質知覚過敏抑制剤塗布後に酸性環境下で試料を保管した。試料を実体顕微鏡、走査電子顕微鏡、偏光顕微鏡で観察した。その結果、実体顕微鏡と偏光顕微鏡では、放射線照射後の試料は照射無群と比較して酸性環境下で脱灰が進行しやすいこと、また、象牙質知覚過敏抑制剤を塗布することによって、酸性環境下での脱灰を抑制する可能性があることが示された。一方で、走査電子顕微鏡での観察結果では、放射線照射後の試料には亀裂を認めた。照射で脆弱になった歯質が、走査電子顕微鏡観察に至るまでの試料の処理の過程で損傷した可能性が考えられた。このことから、放射線照射により、歯の物性が低下する可能性が示された。使用した象牙質知覚過敏抑制剤により、放射線照射後の歯質が強化されると、その後の直接修復処置において、被着面の接着の向上につながる可能性が考えられた。
|