2020 Fiscal Year Research-status Report
ヒトiPS細胞からの生理機能を有した副甲状腺細胞分化誘導同法の開発と機能評価
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19K10179
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
中塚 隆介 関西医科大学, 医学部, 助教 (90454561)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 副甲状腺 / iPS細胞 / 分化誘導 |
Outline of Annual Research Achievements |
多能性幹細胞から副甲状腺細胞の分化誘導については、現在のところ有効かつ確立された分化誘導法は未だに開発されていない。そこで、ヒトiPS細胞を用い発生期の分化系譜に沿った形での新規誘導方法の開発を試みた。ヒトiPS細胞からの副甲状腺細胞分化誘導法の開発と、分化した副甲状腺細胞の同定を試みた。ヒトiPS細胞を副甲状腺および胸腺の共通祖先である第三咽頭弓に分化誘導し、その後Sonic hedgehogによる刺激により副甲状腺細胞を成熟分化させる分化誘導法を開発した。この分化誘導法では、各発生段階に応じた分化マーカーの発現が確認され、in vitroにおいて発生期の分化系譜に沿った副甲状腺誘導が行われていることが確認された。培養中の細胞の免疫蛍光染色により、分化誘導過程で形成される特異な細胞塊に副甲状腺ホルモン(PTH)と副甲状腺細胞特異的に発現する転写因子GCM2をともに発現する細胞が存在することが明らかとなった。さらに、カルシウム感受性受容体(CaSR)と上皮細胞接着分子(EpCAM)の発現により分画された細胞をセルソーティングにより分取し、PTHとGCM2の発現を確かめたところ、CaSR、EpCAM共陽性細胞に高い発現を認め、CaSR、EpCAM共陽性細胞が分化誘導された副甲状腺細胞であることが明らかとなった。以上より、iPS細胞から副甲状腺の分化・成熟過程をin vitroで再現した分化誘導法を確立することに成功した。さらに、分化誘導した副甲状腺細胞は生体組織でみられるような細胞塊として存在しており、副甲状腺特異的なマーカー分子を発現していることを明らかにした。一方、副甲状腺への分化誘導効率は現時点では高いとは言えず、より効率的な誘導法の開発が課題となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
発生学的見地に基づく新たな分化誘導法を確立し、分化した副甲状腺細胞の形態学的同定に成功した。作成された副甲状腺細胞は生体組織と同様の塊状の細胞塊として存在しており、分化誘導においても発生期と同様に細胞同士の自発的なプロセスにより分化していることが考えられた。また、EpCAMおよびCaSR陽性細胞が他の分画よりも高いPTH発現を示すことから、分化した副甲状腺細胞は副甲状腺マーカーと推測される表面抗原を発現する細胞分画に集約されることが明らかとなった。以上から、これらのマーカー分子陽性細胞分画を計測することで分化細胞を定量的に評価することが可能となった。以上より、分化誘導した副甲状腺細胞を評価するシステムが構築されたことから、進捗の評価を「おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
副甲状腺への分化誘導効率が低いため、作成した細胞の機能評価が困難となっている。そこで、in vivoで副甲状腺の過形成を促進すると考えられているEGFRやErbB2を活性化させる物質を用いてより効率的な分化誘導を試みる。分化細胞はEpCAMおよびCaSR陽性細胞として定量評価を行い、分化誘導が効率よく行われる条件を決定する。 副甲状腺細胞では細胞外カルシウム濃度によりPTHの発現量が変化する。そこで、分化した副甲状腺細胞が培養液中のカルシウム濃度に応答してPTH産生量を変化させるか、ELISAにより調べる。次に低カルシウム培地による長期培養を行い、分化誘導した副甲状腺が良好なPTH産生能を維持するかを調べる。PTHは骨芽細胞や間葉系幹細胞に直接作用し、骨・軟骨分化を促進する。そこで、分化誘導した副甲状腺の培養上清を用いたヒト骨由来間葉系幹細胞の骨分化誘導を行う。カルセイン蛍光による骨分化能の定量、骨分化マーカーの発現解析を行い、機能的なPTHが産生されているかを評価する。さらに、分化誘導した副甲状腺細胞の機能をin vivo移植により評価し、iPS細胞より機能的な副甲状腺細胞が分化誘導されていることを確かめる。 これらのことを論文にまとめ、発表を予定している。
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