2020 Fiscal Year Research-status Report
Synthesis of a novel resin with reversible hydrophobicity/hydrophilicity transition caused by temperature trigger, and its development to the dental biomaterials
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19K10186
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Research Institution | Health Sciences University of Hokkaido |
Principal Investigator |
根津 尚史 北海道医療大学, 歯学部, 准教授 (40264056)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遠藤 一彦 北海道医療大学, 歯学部, 教授 (70168821)
建部 二三 北海道医療大学, 歯学部, 助教 (10534448)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 温度誘起ぬれ性可逆転移 / ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド) / PNIPAm / 接触角 / top-view法 / 相転移温度精密測定 / 全自動濁度変化測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
[top-view法接触角測定の精度] 初年度に基本的な計測法を確立したtop-view法による超低接触角計測法と従来法の計測精度の違いを、ガラス(親水性材料)およびアクリルレジン(疎水性材料)上の水の接触角評価により検証した。Top-view法では直接の計測量が角度値でないため精度が計測者の習熟度に依存せず、計測方法として好ましいことが明らかになった。Top-view法は低接触角での計測が従来の直読法に比べ高精度であることに加えて、一断面でのみ角度計測を行う従来法と比べて、液滴形状の異方性の影響を平均化する効果があること、上面観察法の利点としてマイクロプレートなどの凹部での計測にも対応できることから、有用性が高い。 [ぬれ転移温度の任意制御] 「ぬれ性が転移的に変化する温度を任意に設定できるPNIPAm組込樹脂の開発」が本課題の目的である。その合成条件(成分配合条件)を決定するため、温度依存の疎水/親水転移を示すPNIPAmが置かれた環境の極性と転移温度の関係を明らかにした。極性の異なる相溶性溶媒同士の混合で連続的に極性(誘電率)を調節した二元混合溶媒(水/エタノール、水/HEMA)にPNIPAmを溶解し、温度変化させたときの濁度変化点から疎水/親水転移温度を見積もった。この計測の為に、濁度変化測定を全自動で行えるシステムを、汎用分光光度計とPC制御循環恒温槽の組合せで構築した。実験の結果、転移温度Tφは有機溶媒成分の分率が高くなるほど低温側へ分率依存的(定量的)にシフトし、その効果は疎水性の高いHEMAで顕著であった。HEMAはレジンモノマーMMAと容易に共重合できるためTφ調節因子に採用できることが明らかになり、MMAベースのぬれ転移樹脂の合成の実現に近づいた。PNIPAmはポリマーとして配合する方法と、コモノマーとして共重合により組み込む方法の両方を試みる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
進捗があった点: 製作しようとする樹脂のぬれ転移温度調節因子として、PNIPAmの環境の極性が重要であることを明らかにした。また、エタノールと比べて少量で疎水/親水転移温度Tφを大きく変化させたHEMAは、MMAと良好に共重合するため、PNIPAm配合樹脂のマトリックスとしてHEMA/MMA共重合体が有効であるという見通しが立った。この点で大きな進捗があったと考える。 遅れがあった点: COVID19問題の影響で、大学にあっては学生教育への対応を最優先せざるを得ず研究のエフォートが著しく抑制され、学界にあっては発表の機会が著しく制限され、初年度出遅れて二年目に持ち越された合成、ここまでの成果発表が計画通りに進んでいない状況である。これが律速となり、材料評価(物性、生体親和性)、歯科材料応用のステップに進めなかった。このスケジュールの大幅な遅れが深刻であった。 これらを総合的に見て、課題全体としては進行が遅れていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 高分子の合成: 第2年次の成果に基づき、種々の条件(HEMA/MMA比、(P)NIPAm含有率など)で、① PNIPAm、PMMAを粉部、HEMA/MMAを液部、② PMMAを粉部、NIPAm/HEMA/MMAを液部とした粉液重合により、p(NIPAm/HEMA/MMA)共重合体(PNIPAm含有樹脂)を合成する。気泡の発生・混入を避けるための耐熱加圧容器を設計・依頼製造する。 (2) 物性・生物学的安全性評価: ① PNIPAm含有樹脂のTφを初年次に開発した接触角測定法により調べ、Tφへの液部のHEMA/MMA比、(P)NIPAm含有率の影響を検討する。② 各条件で合成した樹脂の機械的強度、化学的安定性(成分溶出)を現有の材料試験機、分析器を用いて評価する。③ 合成した樹脂上で細胞培養を行い、細胞の親和性を従来の樹脂培養皿と比較する。 (3) 歯科材料への応用: NIPAm/HEMA/MMA混合モノマーについて、Tφの上下で歯質、金属、セラミック、コンポジットレジンとの親和性(ぬれ性)を評価する。 (1) → (2) → (3)の時系列での遂行が望ましいが、進捗によっては (1) → (2) と (1) → (3) に分けて実施する。
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Causes of Carryover |
COVID19感染対応で大学教育業務にエフォートの多くを費やさざるを得ない状況が年度全体を通じて解消できず、前年度から持ち越された高分子合成が計画通りに進まなかった。その結果、この高分子材料を用いた研究分担者の業務である (1) 材料の力学評価および (2) 材料の生体安全性の検討を実現できなかった。また、国内外の学会発表が延期になったりオンライン開催になったりした結果、予算計上していた旅費の執行が皆無となった。これらの理由により、予算を計画通りに執行できず、次年度に繰り越すこととなった。 一方、前年度の計画から遅れていた相転移温度自動精密計測システムが稼働し、本科課題で目的とする、任意の相転移温度を材料に付与するための材料組成検討が進んだ。これにより合成の遂行が可能となったので、目的高分子材料の合成とその評価に繰り越した予算を充当する計画である。
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Research Products
(1 results)