2019 Fiscal Year Research-status Report
胎生唾液腺原基の培養評価系を用いた器官の凍結保存技術の開発
Project/Area Number |
19K10193
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Research Institution | Asahi University |
Principal Investigator |
柏俣 正典 朝日大学, 歯学部, 教授 (30152630)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 慶太郎 朝日大学, 歯学部, 准教授 (10549041)
設楽 彰子 朝日大学, 歯学部, 講師 (30508718)
大野 雄太 朝日大学, 歯学部, 助教 (30796644)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 顎下腺原基 / 分枝形態形成 / 凍結保存 / 上皮成長因子 / ERK1/2 / 上皮間葉相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
株化細胞の凍結保存は基礎研究分野で日常的に使用されている。しかし、生体の器官や臓器の凍結保存技術は確立されていない。胎生13日のマウス顎下腺原基は、上皮細胞とそれを取り囲む間葉細胞で構成される未熟な器官である。その後、上皮細胞は経過時間とともに増殖して器官の体積を増加させるが、同時に上皮細胞によって形成される小葉(endpiece)の数を増加させる。この現象は分枝形態形成とよばれており、上皮と間葉間で取り交わされる細胞間コミュニケーションによって制御されると考えられている。事実、胎生期顎下腺原基をフィルター上で無血清の状態で器官培養しても上皮のendpiece数は急速に増加する。これは器官形成の仕組みが顎下腺原基に存在していることを意味する。本研究では、凍結保存した顎下腺原基を器官培養することで分枝形態形成の状態を観察し、凍結によって生じる顎下腺原基のダメージの評価系を確立することを目的とする。また、凍結の際に凍結保護薬を添加した場合に示す効果を明らかにして生物学的機能を失うことなく凍結保存できる器官凍結法を確立したいと考えている。 凍結保存薬が存在しない状態で顎下腺原基を凍結した場合、培養下に移した顎下腺原基の状態は著しく変化していた。上皮と間葉の境界線が消失していることから、上皮細胞と細胞間基質の破壊が生じていると推察された。しかし、凍結保護薬としてジメチルスルホキシド(DMSO)を10%添加して凍結したところ、顎下腺原基の分枝形態形成は、正常の顎下腺原基とは異なるものの、若干ではあるが確認された。これらの結果から、凍結保護薬は株化細胞だけではなく、器官の凍結の際にも保護的効果を示すことが分かり、顎下腺原基の凍結保存方法開発の可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
凍結保護薬を含まない状態でマウス顎下腺原基を凍結するとほとんどの細胞は死滅してしまうことが分かった。しかし、株化細胞の凍結に際して保護効果が認められているジメチルスルホキシド(DMSO)は顎下腺の凍結保護薬として有用であった。
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Strategy for Future Research Activity |
さらに有効な凍結保護薬を探索するため、既知の保護薬の効果を広範に調査して行く。また、保護薬の至適濃度の決定や併用効果についても検討する。各種保護薬にはそれ自身に細胞毒性があることから、毒性を最小限にする解凍方法についても検討をする予定である。また、顎下腺原基を凍結することで生じる細胞や細胞外基質の破壊の状態を組織化学的に観察することを計画している。
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