2019 Fiscal Year Research-status Report
超分子ヒーター温熱発現性足場材で骨再生を時空間制御する
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19K10197
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Research Institution | Fukuoka Dental College |
Principal Investigator |
川口 稔 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 講師 (10122780)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | カーボンナノチューブ / DNA/プロタミン複合体 / 温熱発現 / 骨再生 / 足場材 |
Outline of Annual Research Achievements |
光照射によって温熱発現するカーボンナノチューブの特性を活かした新規骨再生足場材を合成した。ベースとなる素材はDNA/プロタミン複合体で、これまでの成果から優れた骨伝導性を有することが知られている。本研究ではこの複合体に可溶化したカーボンナノチューブを配合した。カーボンナノチューブはDNAと特異的結合を形成し安定化するため、調製したDNA・プロタミン/カーボンナノチューブ(DP/CNT)複合体には任意の割合でカーボンナノチューブを配合できる。こうして調製した複合体は近赤外線照射によって迅速な温熱発現性を示し、照射光強度の制御によって発現温度のコントロールが容易であることが明らかとなった。この成果はvitro系での結果であるため、実際の骨欠損部においても制御温熱の発現可能かどうかについては次年度の検討項目とする。 令和元年度ではカーボンナノチューブの配合量を調整した5種の複合体を合成し、温熱発現特性や物理的性質ならびに機械的強度について検討を行った。その結果いずれの複合体も温熱制御が容易であり、水と混和することによって流動性のあるペースト状とすることができた。 当初、ベース素材のDNA/プロタミン複合体にカーボンナノチューブを配合した際に、複合体のペースト性状の維持に支障をおよぼすことが懸念されたが、調製した新規複合体はDNA/プロタミン複合体の流動性を維持しており、操作性におよぼす支障はなかった。このことからも、不定形状の骨欠損部に対応できる足場材として応用できることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
骨再生用足場材としての応用にはDNA/プロタミン複合体のもつペースト性状が重要なキーポイントとなる。本研究で調製したカーボンナノチューブ配合複合体とした場合に、このペースト性状に支障をおよぼすことが最大の懸念材料であったが、初年度の研究成果から、当初懸念された問題点は払拭できた。また光照射による温熱発現特性も、配合するカーボンナノチューブの量に依存することが予想されたが、これも予想通り容量依存性が確認され、なおかつ予想以上の迅速異な光応答性が確認できた。これらの成果から、当初計画どおり順調に推進できたと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
調製した新規DP/CNT複合体はin vitroにおける基本的な特性評価を完了している。これまでの成果を踏まえて、令和2年度ではvivoでの評価を進める。具体的には、マウスの頭蓋骨欠損モデルを用いて、填入した複合体に近赤外線を照射し、発現温度の光応答性を検証する。すでに骨再生を促進する温熱付加条件については既報の知見があるため、その条件に見合った照射条件検索を進める。また生体内での複合体の分解挙動を確認するために、マウス皮下に埋入した複合体の経時的分解を組織学的に評価する。 これらのvivoにおける評価検討を令和2年度の重点目標として研究を推進する。
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Causes of Carryover |
当初、本年度中に支出を予定していた複合体のSEM像撮影や気孔率測定の分析費用が、次年度の決済となったため、今年度に支出予定として計上していた予算の執行率が当初計画を下回った。今年度の分は次年度(令和2年度)の予算として執行する予定である。
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Research Products
(1 results)