2020 Fiscal Year Research-status Report
ブレインマシンインターフェイスと脳電気刺激法を併用した嚥下機能再建の新規治療戦略
Project/Area Number |
19K10218
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
前澤 仁志 大阪大学, 医学系研究科, 特任講師(常勤) (80567727)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 脳磁図 / 嚥下 / tDCS / ニューロモデュレーション / 機械学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
嚥下機能は外界から栄養を取り入れるための生命維持に不可欠な機能であり、“食の楽しみ”など生活の質(QOL)の向上にも密接に関与している。特に舌運動はヒトの嚥下機能遂行に極めて重要な役割を担っている。われわれは、全頭型脳磁図計測装置を用いて舌運動と脳磁場反応との脳反応―運動コヒーレンス解析(Cortico-kinematic coherence, CKC)を行うことで、舌運動を行う際の大脳皮質の時間空間情報処理機構を明らかにした。従来のCKC解析手法では、加速度計測装置を運動部位に設置し、運動を評価している。しかし、磁性体である加速度計を口腔領域に設置するとアーチファクトを生じるため脳磁場信号解析を行うことができなくなる。そこでわれわれは、ビデオカメラを用いて舌運動を動画保存し、機会学習を用いたキャプチャーモーション解析により舌運動を評価する手法を開発した。舌運動と脳反応とのコヒーレンスは両側半球に認められ、電流源は舌感覚運動野に同定された。本CKC手法は、電極などを口腔内に設置する必要がなく、誤嚥や感染のリスクがないという利点を有する。また、多点を同時に評価することが可能であり、今後は嚥下時の顎顔面領域と脳信号とのコヒーレンス解析により嚥下機能の時間空間情報処理機構に応用する。また、舌運動野への経頭蓋電流刺激による舌運動野の可塑性変化ならびに舌運動機能向上に関する研究を報告した(Maezawa et al, 2020)。四肢領域と異なり舌運動は皮質延髄路を通じて両側大脳半球により制御されている。そこで、われわれは両側舌運動野を同時刺激する手法を新たに確立し、舌運動野の興奮性変化を効果的に誘導することに成功した。得られた研究成果は摂食嚥下機能の中枢制御機構解明ならびに嚥下機能向上に結びつく成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題にて、両側舌運動野を同時刺激する手法を世界に先駆けて確立し、舌運動野の可塑性変化ならびに舌運動機能向上を誘導することに成功した(Maezawa et al, 2020) 。また、咀嚼運動と歩行運動との異なる生体リズム運動の引き込み現象に関する報告を行った(Maezawa et al, 2020)。さらに、脳機能解析と機械学習とを組み合わせた新たな脳機能解析手法を用いて舌随意運動を行う際の大脳皮質の時間空間情報処理機構を明らかにした(論文投稿中)。これらの研究成果は摂食嚥下機能の中枢制御機構解明ならびに嚥下機能向上に結びつく成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
嚥下運動は顎顔面口腔領域の多部位が協調的かつ精緻に作動することにより実行される。われわれは本研究課題にて多点を同時に評価可能な“機会学習を用いたキャプチャーモーションによる運動―脳信号コヒーレンス解析手法”を開発した。今後はこの手法を用いて、嚥下時にはどのタイミング(時間)でどの皮質領域(空間)の活動が関与するのかを明らかにし、嚥下機能の時空間的皮質制御機構を解明する。さらに本研究課題にて、“両側舌運動野への経頭蓋電流刺激法”を開発した(Maezawa et al, 2020)。この手法では、健常者において両側舌運動野を同時刺激することにより片側舌運動野刺激よりも効果的に舌運動野の可塑性変化ならびに舌運動機能向上を誘導することに成功した。今後はこの手法を、摂食嚥下障害を有する患者への臨床応用し、嚥下機能障害や咀嚼障害の患者のニューロリハビリテーション分野への応用を図る。また、本研究課題において咀嚼運動と歩行運動との異なる生体リズム運動の引き込み現象に関する報告を行った(Maezawa et al, 2020)。今後は、異なる生体リズム間の引き込み現象に皮質がどのように関与するのかを明らかにすることで、摂食嚥下機能のリズム生成における皮質の関与を明らかにする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響により健常者を対象とした計測が困難な時期があったため、次年度使用額が生じた。2020年度末には、感染症対策を行った上で健常者を対象とした計測を開始し順調に解析も進んでいる。最終年度には、当初の計画通りの計測・解析が終了する予定である。
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