2019 Fiscal Year Research-status Report
オーラルフレイル回避を目指した筋機能訓練の有効性検討と新規個別スキームの開発
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19K10225
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
水口 一 岡山大学, 大学病院, 講師 (30325097)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三木 春奈 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (60739902)
水口 真実 岡山大学, 大学病院, 医員 (20634489)
窪木 拓男 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (00225195)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 高齢者 / 筋機能 / 摂食機能 / 筋電図 / ポリソムノグラフ / 機械学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
摂食機能の低下の抑制が可能となれば,健常高齢者の要介護状態への転落を遅延できるかもしれなという研究仮設のもと,高齢者の筋機能維持を筋機能訓練の観点から検証することを当初の目的としていた。その一方で,睡眠時の口腔周囲筋の機能亢進が筋機能訓練の一助となりうる可能性にも着目した。その結果,高齢者の就寝時の筋活動量と筋機能との関連についても検討を行うこととなった。 第一に,就寝中の咬筋の筋活動を簡便かつ適正に定量化することを目的に,音声動画撮影を追加したpolysomnography(PSG)検査をもとに,筋電図による睡眠時筋活動検査システムについて検討を行った。しかしながら従来の睡眠時の口腔周囲筋の活動評価は,筋電図をもとに一定の閾値を超えた筋活動の頻度を基準としてきたため,掻痒や体動による筋電図波形の亢進も筋活動の亢進として誤認されてしまう場合があり,その信頼性に問題があることが明らかとなった。すなわち,我々が行った動画記録を伴うポリソムノグラフ(PSG)検査において,咬筋の筋活動が亢進したイベントのうち,80.7±16.0%が体動や掻痒等による非特異的な筋活動やアーチファクトに起因したものであった事が示された。 本研究結果は,筋電計単体による口腔周囲筋の評価には多くの偽陽性イベントが含まれていることを示すものであり,従来の検査方法,評価方法の妥当性を高く評価できないとう結果となった。事実,閉塞性睡眠時無呼吸(OSAS)症状が出現する際には低酸素状態となることから,交感神経活動の亢進,微小/睡眠覚醒,筋活動の亢進が出現し,その結果,筋活動の亢進が認められることが知られている。 そこで,検査が容易な筋電図検査において,真の口腔周囲筋の活動と偽の筋電図の亢進現象(OSAS関連性,嚥下関連性,動作関連性,その他)を識別する手法の確立が急務と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
睡眠中の脳波,心電図,眼球運動,呼吸,末梢血酸素飽和度,筋電図測定を同時記録できるPSG機器は非常に高額であるため購入は不可能であった。そこで,PSG機器をレンタル契約することとしたが,その業者の選定ならびに契約に関する事務手続きに多くの時間を要してしまった。さらに,本学教職員もしくは本院来院患者を対象とした臨床研究を開始するため,本学倫理委員会への申請手続きの準備,PSG機器によるデータ採取といった環境設定の構築に予想以上の時間を要してしまった。 その上,新型コロナウイルスの感染拡大に伴い,本学の活動制限指針により新規の研究開始が事実上凍結となってしまい,研究遂行が不可能となった。そのため,やむを得ず過去の睡眠研究データの見直しを行い,それらの再解析を試みたことも本プロジェクトの進捗が遅延した原因と言える。現在,過去の睡眠研究データの再解析を行い,真の口腔周囲筋の亢進と偽の筋電図亢進(OSAS関連性,嚥下関連性,動作関連性,その他)のイベントをPSG検査,動画・音声記録,筋電図検査からなる包括的評価方法により識別し,それら各イベントの筋電図データをテキストデータとして抽出する一連の過程は終了している。そのため,今後は速やかに解析を行う予定である。 岡山大学大学院大学院 ヘルスシステム統合科学研究科,人間情報処理学分野の阿部匡伸先生と本研究に関する共同研究体制の構築が既になされており,筋電図の波形解析を含めた今後のデータ解析に関しては迅速な進捗が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
高齢者の就寝中の口腔周囲筋の筋活動を定量化するためには,得られた筋電図データをもとに,真の口腔周囲筋の筋活動量亢進と,体動や掻痒といったアーチファクトによる筋電図波形の上昇を識別する必要がある。 そこで,今後の本研究の方策として,以下の方法を用いて,得られた筋電図波形データを識別しうるパラメータの解明を試みる。すなわち,睡眠検査結果と就寝中の動画,音声記録から,就寝時の咬筋筋電図が亢進したイベントを,真の口腔周囲筋の亢進と偽の筋電図亢進(OSAS関連性,嚥下関連性,動作関連性,その他)に分別し,それらのパワー(時間領域)とケプストラム(周波数領域)を抽出し,特徴量と真のSBタイプを用いて,統計的機械学習によりSB判別モデルを構築する。機械学習方式は,SVM方式,決定木方式,DNN方式を用いて検討することとする。この際,真の口腔周囲筋の亢進と偽の筋電図亢進を分別する際に,脳波,心電図,呼吸状態について併せて検討することにより,これらの識別精度を高めるよう配慮を行う。 これらによって得られた筋電図波形のテキストデータより,真の口腔周囲筋の亢進と偽の筋電図亢進の筋電図波形の持続時間と振幅の方向の特徴的な所見,つまりパワー(時間領域)とケプストラム(周波数領域)という2つのパラメータの差異について検討を加えることにより,筋電図波形の識別(定量化)を確率論的に試みる。 なお我々の先行研究によると,健常者において1時間あたり1.6+/-1.1回のRMMA,無呼吸イベントが4.8+/-3.3回認められた。機械学習において一般的に必要とされる教師データ数は約100例が必要最低数とされている。そのため,各被験者の睡眠時間を6時間とした場合,統計学的なパワーの確保のためには,12名の被験者数が最低限必要と考えられる。
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Causes of Carryover |
睡眠時の生体反応を計測するポリソムノグラフ検査機器のレンタル契約に時間を要したため,研究開始が遅延した。これにより,予算執行にも遅延が生じたため当該年度の支出額が予定に達しなかった。 次年度は,今年度の研究進捗の遅延を回復するため,ポリソムノグラフ検査機器のレンタル契約期間を当初の予定より延長する予定である。そのため,検査機器のレンタル費用が当初の予定よりも増大するとともに,データ解析費用についても予定通りの研究費の支出が確実に必要となる。
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[Journal Article] 特別養護老人ホーム入所者における顎関節脱臼の実態調査2019
Author(s)
松香 芳三, 西山 暁, 湯浅 秀道, 水口 一, 髙野 直久, 羽毛田 匡, 鈴木 善貴, Junhel C. DALANON, 久保田 英朗, 杉崎 正志, 木野 孔司, 古谷野 潔
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Journal Title
日本顎関節学会雑誌
Volume: 30(3)
Pages: 249-254
DOI
Peer Reviewed
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