2020 Fiscal Year Research-status Report
オーラルフレイル回避を目指した筋機能訓練の有効性検討と新規個別スキームの開発
Project/Area Number |
19K10225
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
水口 一 岡山大学, 大学病院, 講師 (30325097)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三木 春奈 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (60739902)
水口 真実 岡山大学, 大学病院, 医員 (20634489)
窪木 拓男 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (00225195)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 要介護高齢者 / 咀嚼機能 / 筋電図 / 顎下筋群 / 閉口筋機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在,要介護高齢者の増大が社会的問題となっている。そこで要介護状態の発症を遅らせ,健康寿命の延伸が強く望まれている。近年,フレイルが本邦高齢者の自立喪失の有意なリスク因子であると報告された。フレイルサイクルの一端に口腔機能,特に咀嚼嚥下機能の低下による低栄養がある。そこで,口腔機能の低下を早期に発見し,早期に口腔機能,栄養状態の改善を図ることができれば,高齢者の要介護状態への転落を遅延できるかもしれない。 咀嚼嚥下機能のうち,咀嚼機能の評価には咬合力測定,グミゼリーやチューインガムといった試験食を実際に咀嚼させることによる評価方法やアンケートによる主観評価方法が用いられている。しかし咬合力測定や試験食による評価には高価な機材が必要であり簡便に広く臨床応用するのは難しい。一方,アンケート調査では被検者の食品の嗜好性や認知機能の多寡による影響を強く受けるといった問題点がある(富永ら,2007)。そのため,簡便かつ精度高く咀嚼機能を評価できるシステムの開発が強く望まれている。 令和2年度には健常者を被検者として,咬合時,嚥下時の筋電図学的検討を行った。その結果,嚥下時には閉口筋に加え,顎下筋群の筋活動亢進が認められた(岡山大学臨床研究審査専門委員会承認 臨2008-003)。さらに,口腔機能が低下した高齢者の筋電図を正常高齢者と比較したところ,低下高齢者では筋活動量の低下といった閉口筋(咬筋)機能の低下とともに顎下筋群の筋電図パターンに差異が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は,意識下での咬合時,嚥下時の咬筋,顎下筋群の筋電図学的検討を行った。その後,口腔機能が低下した高齢者の筋電図を正常高齢者と比較し,低下高齢者では筋活動量の低下といった閉口筋(咬筋)機能の低下とともに顎下筋群の筋電図パターンの変調を確認した。 これにより,口腔機能低下者と非低下者を筋電図学的検討により識別できる可能性が示唆された。これら予備的検討を行えたものの,高齢者を対象とした咀嚼機能検査,筋電図検査の実施は,新型コロナウイルスの感染拡大に伴い,本学の活動制限指針により新規の研究開始が事実上凍結となったため研究実施が不可能であった。さらに高齢者を対象とした本申請研究は,高齢者の受診控え,高齢者施設の立入禁止処置等により,本年度に実施予定であった高齢者を対象とした咀嚼時の筋活動の検討,筋機能訓練の定量化が行えなかった。 このため,本申請研究は“やや遅れている”と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
現在,睡眠時ブラキシズムと嚥下や体動の識別を筋電図学的に行う検討をしており,隠れマルコフモデルを応用した機械学習により高い精度を示す識別手法の確立に成功している。そのため今後は,この機械学習による筋電図の識別手法を高齢者の咀嚼時筋電図解析に応用し,口腔機能低下者と非低下者を筋電図学的見地から識別する手法を検討する。そのうえで,この識別手法による陽性/陰性適中率,感度/特異度の検討行うとともに,筋機能訓練によりどの程度の咀嚼機能の維持,回復が見込めるのか検証する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い,本学の活動制限指針により新規の研究開始が事実上凍結となったため研究実施ができない期間があった。特に高齢者を対象とした申請本研究は,高齢者の受診控え,高齢者施設の立入禁止処置等により,本年度に実施予定であった高齢者を対象とした咀嚼時の筋活動の検討,筋機能訓練の定量化が行えなかった。そのため,これらは次年度に繰り越し実施予定である。
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