2019 Fiscal Year Research-status Report
ポリリン酸を用いた炎症サイトカインシグナル制御法―インプラント周囲炎治療のために
Project/Area Number |
19K10226
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
原田 佳奈 広島大学, 医系科学研究科(医), 助教 (90609744)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
酒井 規雄 広島大学, 医系科学研究科(医), 教授 (70263407)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ポリリン酸 / STAT |
Outline of Annual Research Achievements |
インプラント周囲炎はインプラントを長期維持する上で大きな問題であり、確実な治療効果が得られる治療法の確立が求められている。インプラント周囲炎では、インプラント周囲粘膜の炎症に続き、周囲骨の吸収が引き起こされる。このような炎症を形作り骨吸収を促進する因子として、炎症に関連する各種のサイトカインがある。一方、多数のリン酸が直鎖状に結合した生体内分子であるポリリン酸は、骨形成促進や炎症制御に働くことが示唆されているが、その作用には未解明の部分が多い。本研究では、インプラント周囲炎治療においてポリリン酸を活用するための知見を得るために、炎症や骨吸収促進に関わるサイトカインの作用に及ぼすポリリン酸の影響を解析する。 炎症誘導に深く関わるマクロファージの培養系において、ポリリン酸処置がリポポリサッカライド(LPS)によるSTAT1リン酸化を抑制し炎症関連分子の発現を抑制したこと、LPS処置マクロファージにおけるSTATの活性化にはマクロファージ自身が放出する様々なサイトカインが寄与することから、特にSTATを活性化するサイトカインに注目してポリリン酸の効果を検討することにした。2019年度は、ポリリン酸が影響を及ぼすサイトカインの候補を探すため、LPS処置マクロファージにおいて、ポリリン酸がSTAT1以外のSTATの活性化にも影響を与えるか検討した。その結果、ポリリン酸はLPSによるSTAT3リン酸化を抑制する一方、STAT5リン酸化を促進することが明らかになった。以上のことから、今後、炎症や骨吸収に関わるマクロファージ、破骨細胞等におけるサイトカインの作用に及ぼすポリリン酸の影響を検討するにあたって、STAT1の他、STAT3、STAT5を活性化するサイトカインに焦点を当てる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以前の研究により、マクロファージ培養系において、ポリリン酸はLPSによるSTAT1リン酸化を抑制することが明らかになった。さらに2019年度の研究により、ポリリン酸はLPSによるSTAT3リン酸化を抑制する一方、STAT5リン酸化を促進することを見出し、ポリリン酸の新たな作用を明らかにすることができた。また、これらの結果に基づき、今後、炎症や骨吸収に関わるマクロファージ、破骨細胞等におけるサイトカインの作用に及ぼすポリリン酸の影響を解析するにあたって、特にSTAT1、STAT3、STAT5を活性化するサイトカインに注目する。進捗状況はおおむね当初の計画通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
炎症や骨吸収に関わるマクロファージ、破骨細胞等におけるサイトカインの作用に及ぼすポリリン酸の影響を解析する。2019年度までの研究成果を受け、STAT1、STAT3、STAT5を活性化するサイトカインについて特に研究を進める予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、2019年度計画のマクロファージにおけるポリリン酸の作用機構の解析を2020年度以降も行うことになったためである。この研究の継続に、2019年度助成金から生じた次年度使用額を使用する。2020年度助成金は、当初の計画通り、マクロファージ、破骨細胞等におけるサイトカインの作用に及ぼすポリリン酸の影響の解析に使用する。
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