2020 Fiscal Year Research-status Report
ポリリン酸を用いた炎症サイトカインシグナル制御法―インプラント周囲炎治療のために
Project/Area Number |
19K10226
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
原田 佳奈 広島大学, 医系科学研究科(医), 助教 (90609744)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
酒井 規雄 広島大学, 医系科学研究科(医), 教授 (70263407)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ポリリン酸 / IL-27 / STAT1 |
Outline of Annual Research Achievements |
多数のリン酸が直鎖状に結合した生体内分子であるポリリン酸は、骨形成促進や炎症制御に働くことが示唆されているが、その作用には未解明の部分が多い。本研究では、インプラント周囲炎治療においてポリリン酸を活用するための知見を得るために、炎症や骨吸収に関わるサイトカインの作用に及ぼすポリリン酸の影響を解析する。2020年度は、炎症に関わるマクロファージにおいてポリリン酸がサイトカインの作用を調節する可能性を検討した。 炎症誘導因子リポポリサッカライド(LPS)により活性化したマクロファージにおいて、ポリリン酸は転写因子STAT1のリン酸化を著明に抑制し、炎症関連分子の発現を低下させる。その機序の一つとして、ポリリン酸はIFN-βによるSTAT1リン酸化を抑制することをこれまでに明らかにしてきた。LPSによるSTAT1リン酸化におけるIFN-βの寄与度をIFN-β中和抗体を用いて調べたところ、IFN-βの寄与は部分的であり、STAT1を活性化する他のサイトカインの作用もポリリン酸により抑制されている可能性が考えられた。マクロファージにLPSを処置し、各種サイトカインの放出量を測定したところ、STAT1リン酸化の時間経過と一致して放出されるいくつかのサイトカインを認め、そのうちインターロイキンIL-27はSTAT1リン酸化を顕著に誘導した。この結果を受け、IL-27を中心に、マクロファージにおける各種サイトカインの作用に及ぼすポリリン酸の影響の検討を開始した。検討を進めるなかで、LPSで活性化したマクロファージによるIL-27の放出は、ポリリン酸処置により低下することが明らかになった。したがって、ポリリン酸は、IFN-βだけでなくIL-27を介した経路により、炎症に関わるマクロファージの機能を制御する可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は、マクロファージにおけるポリリン酸の新たな作用として、LPSによるIL-27の産生誘導を抑制することを明らかにできた。一方、培養マクロファージを用いてIL-27をはじめとする各種サイトカインの作用に及ぼすポリリン酸の影響の検討を開始し、2020年度内に検討を終える予定であったが、予想よりも時間がかかっており、2021年度も検討を続ける必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
炎症や骨吸収に関わるマクロファージ、破骨細胞等において、IL-27をはじめとしたサイトカインの作用に及ぼすポリリン酸の影響を明らかにする。培養細胞でのポリリン酸のサイトカイン調節作用についてまとまった知見が得られれば、炎症性骨吸収のモデルを用いた検討に発展させていく。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、各種サイトカインの作用に及ぼすポリリン酸の影響の解析に予想よりも時間がかかり、2021年度も引き続き行うことになったためである。2020年度助成金から生じた次年度使用額と2021年度助成金は、この検討の継続に使用する。また、炎症性骨吸収モデルにおけるポリリン酸の作用の検討に使用する。
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