2020 Fiscal Year Research-status Report
高齢ドナー由来間葉系幹細胞を用いた骨増生時における細菌由来因子影響の解析研究
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19K10251
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
下田平 直大 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 客員研究員 (20710007)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 正宏 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 教授 (00294570)
末廣 史雄 鹿児島大学, 医歯学域鹿児島大学病院, 講師 (40524781)
原田 佳枝 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 助教 (60432663)
石井 正和 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 助教 (00456683)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 間葉系幹細胞 / MSC / 歯周病 / SASP |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、実験動物を用いて高齢ドナーの顎骨MSC(間葉系幹細胞)の特徴を解析し、組織再生への免疫応答を介した口腔内細菌の影響への関与を解明する研究である。これまでに、10週と78-80週齢雄性マウスから顎骨・長管骨由来MSC採取に成功したが、長管骨から採取した細胞には骨細胞が多く混入することが問題となっていた。今回は採取方法も見直し、顎骨細胞と同様のプロトコールで細胞を採取した細胞に変更して研究を進めた。 78-80週齢マウス由来MSC(OMSC)と10週齢マウス由来MSC(YMSC)を比較し、同じ動物から採取した長管骨由来MSCとも比較した。誘導による骨分化は顎骨YMSC・OMSCは長管骨由来細胞と比較すると骨分化は亢進していたが、加齢により分化は顎骨由来細胞と大腿骨由来細胞はともに抑制されており、顎骨OMSCは顎骨YMSCよりも、大腿骨OMSCは大腿骨YMSCよりも亢進傾向分化は抑制されていた。一方、脂肪分化については全体的に顎骨由来細胞は大腿骨由来細胞より抑制されていたが、加齢による変化は顎骨と大腿骨で異なる傾向を示した。大腿骨OMSCの脂肪分化は大腿骨YMSCとは変わらなかったが、顎骨OMSCの脂肪分化は顎骨YMSCよりも亢進傾向を示し、顎骨YMSCには殆ど脂肪滴が認められないにもかかわらず、顎骨OMSCでは脂肪滴が確認できた。さらに、SASP因子についてリアルタイムPCR法で解析したところ、顎骨由来細胞と大腿骨由来細胞では、加齢によって遺伝子レベルでも異なる変化が認められた。 以上より顎骨由来OMSCは、個体老化により細胞の性質が大腿骨由来細胞とは異なることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度まではマウスからの細胞採取を行っても、細胞の品質が安定せず実験結果に影響をおよぼすこともあった。しかし大腿骨細胞の採取プロトコールを変更してからは、採取した細胞は全てMSCに特徴的な性質を持っており、安定したデータが取得できるようになった。しかし、新型コロナウイルス感染症の問題もあり、学内外の研究者と十分に連携をとって実験をすすめるには障壁を感じることも多く、MSCにおける炎症反応は複雑で解析まで時間を要している。当初計画していた細胞の移植実験を完了するには、もう少し時間がかかる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
顎骨由来細胞は、大腿骨由来細胞よりも若年マウス由来の時点でSASP因子の発現が変化しており、この特徴が顎骨由来細胞の骨分化の特徴に影響を及ぼしている可能性がある。今後は、顎骨由来OMSCに特徴的なSASP因子放出の亢進を抑えて老化を抑制する方法について検討を行ったり、AaやPg等細菌由来毒素で顎骨由来OMSCを刺激時にSASP因子に変化があるか調べ、この変化が骨分化へ影響を及ぼすか明らかにしていく予定である。
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Causes of Carryover |
細胞採取方法が安定せず、細胞解析や移植実験の準備が完了しないため。本年度これら実験を進めるので次年度使用分の経費を使う予定である。
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