2021 Fiscal Year Research-status Report
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19K10260
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
奥原 滋 日本女子大学, 家政学部, 研究員 (10451973)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森田 圭一 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 講師 (10396971)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | sonic hedgehog / エンハンサー / 喉頭蓋 / 咽頭 |
Outline of Annual Research Achievements |
モデルマウスの表現型解析を行った。遺伝子改変アレルは、ShhEGFP(Shh遺伝子が欠失)、MFCS4del(ShhエンハンサーであるMFCS4が欠失)、Foxc1ch(Foxc1遺伝子の点突然変異により停止コドンに変異しFoxc1タンパク質が短縮される)である。これら3つのアレルは、単独のヘテロ欠失では表現型がない。ShhEGFP; MFCS4del複合ヘテロ改変マウスは、喉頭蓋が完全に欠失し、喉頭蓋軟骨もない。一方、Foxc1chホモマウスは、過去の報告によれば喉頭蓋軟骨が欠失するとあるが、正常野生型よりは小さいものの、喉頭蓋も喉頭蓋軟骨も存在していた。 ShhEGFP; MFCS4del複合ヘテロ改変マウスとFoxc1chホモマウスは、共に喉頭蓋が低形成になること明らかになったので、MFCS4エンハンサーに依存するShhシグナリングとFoxc1転写因子の下流シグナリングは、下流に喉頭蓋形成、特に同軟骨形成を下流に持つ可能性が浮上した。そこで、ShhEGFP; Foxc1ch複合ヘテロ改変マウスを作製したが、喉頭蓋が低形成になる表現型はなかった。 一方、2つのシグナリングが同一の下流を持つ場合、シグナリング間に拮抗的関係があり、バランスが重要である場合がある。すなわち、ShhEGFP; MFCS4delではShhシグナリングは4アレル中2アレルが欠けているが、Foxc1は欠けておらず、Shhシグナリングのみ-2アレルである。一方、ShhEGFP; Foxc1ch複合ヘテロ改変マウスは、Shhシグナリングは-1、Foxc1転写因子の下流シグナリングも-1で、バランスがとれているため、表現型がない、という考え方である。 現在、この可能性を探るべく、ShhEGFP; MFCS4del複合ヘテロFoxc1chホモ改変マウスを作成している。表現型がない場合、拮抗的関係が濃厚になる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
問題点は3つ、研究代表者の身分の異動、研究場所の移動、マウスの飼育場所の移動である。 研究代表者は当該年度から日本女子大学に異動したが、当該大学内に、本研究に必要な実験設備が全てある訳ではなかった。研究環境を再構築しマウスを移動するために科研費最終年度予算を使うのは無計画・不適切で、金額も不足であった。そこで、当該年度においては、新年度からの研究費を期待しつつ新たな研究環境を極力低予算で研究環境を再構築する努力をした。日本女子大学内での廃棄予定実験機器を貰い受けては、洗浄・滅菌を施して本研究に使用できるようにした。また、マウスの移動は、6つの遺伝子改変アレルの移動となる。最大効率で移動させるために、一個体に多くの改変アレルを持たせるよう交配を繰り返した。具体的には、以下の交配を行った。ShhEGFP; R26R-LacZ x Foxc1ch及びMFCS4del; Mesp1-cre x Foxc1chである。これらから生じることを期するShhEGFP; R26R-LacZ; Foxc1ch及びMFCS4del; Mesp1-cre; Foxc1chはいずれも表現型を示さないが、繁殖能力も持ち合わせていた。この事実は、直接研究成果とはならないが、研究計画を俯瞰できる貴重な情報である。現在、これらの3重複合改変マウスのオス個体を用いて胚操作を行い、微生物学的に無菌なマウスを作成し、これを日本女子大学へ移動するべく、手続きを終えて待機中である。 本研究計画は、この異動により延長を余儀なくされたが、2022年度から新たに科研費が採択されたこともあり、延長期間は、より有効に両研究計画を実行できる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
MFCS4エンハンサーに依存するShhシグナリングとFoxc1転写因子の下流シグナリングは、共に、下流に喉頭蓋形成、特に同軟骨形成を持つ可能性がある。その場合、両者が協調的に働くときと拮抗的に働くときがある。ShhEGFP; Foxc1ch複合ヘテロ改変マウスに表現型はなかったので、協調的ではないことが明らかになった。拮抗的である場合、2つのシグナリングのバランスが重要である。すなわち、ShhEGFPとMFCS4delは共にShhシグナリングのメンバーで、これらの複合ヘテロ改変マウスでは、Shhシグナリングは4アレル中2アレルが欠けているが、Foxc1は欠けておらず、正常マウスと比べるとShhシグナリングのみ-2アレルである。一方、ShhEGFP; Foxc1ch複合ヘテロ改変マウスは、Shhシグナリングは-1、Foxc1転写因子の下流シグナリングも-1で、バランスがとれているため表現型がない。この、拮抗的である場合を検討すべく、ShhEGFP; MFCS4del複合ヘテロFoxc1chホモ改変マウスを作成している。表現型がない場合、拮抗的であることが濃厚になる。 加えて、モデルマウスにおける喉頭蓋低形成は、ヒトのそれとは異なり、中央に切り込みのあるような形ではなかったことも明らかになりつつある。これについては、立体的な観察・イメージングが最適なので、その方法として、microCTや走査型電子顕微鏡などの方法を検討してゆく。さらに、ヒトの低形成における中央の切り込みは、左右対称に原基が発生し癒合する可能性も示すので、特に軟骨原基に着目して、モデルマウスで詳細な組織学的観察を行う予定である。 喉頭蓋以外の咽頭・喉頭器官として、特に甲状軟骨や蝶形骨体部の観察も継続するが、これらは、モデルマウスでは厚さが薄くなることが分かっているので、これを統計学的に解析する。
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Causes of Carryover |
異動に伴う新研究環境構築とマウスの移動が必要になった。身分は日本女子大学に得られたが、同大学に全ての設備があるわけではなかった。一方で、当該科研費の残予算では新環境構築とマウス移動両方は賄えなかった。そこで2021年度、研究環境については、同大学を中心に再利用機器を収集して経費削減に努めた。また、マウス移動については、6アレルの移動が必要なので、経費削減のため、一個体に可能な限りの組換えアレルを乗せるべく、交配を行った。同時に、各アレルの権利関係を解決したが、権利者が多岐にわたること、学術目的に限定しても尚許可が容易ではない場合があり共同研究の提携の必要があるなど、各方面を煩わせてようやく解決した。 これらの尽力の結果、2022年度は、残額で新研究環境での研究継続の目途が立ったので、研究計画を完了に向けて進められる見込みである。
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Research Products
(1 results)