2019 Fiscal Year Research-status Report
骨髄由来免疫抑制性細胞の特性解析による口腔癌の新規免疫療法の開発
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19K10262
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
冨原 圭 富山大学, 学術研究部医学系, 准教授 (70404738)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山崎 学 新潟大学, 医歯学系, 助教 (10547516)
野口 誠 富山大学, 学術研究部医学系, 教授 (50208328)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 口腔癌 / マウスモデル / 免疫老化 / 免疫チェックポイント分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
免疫チェックポイント分子を標的とした免疫療法の登場は、切除不能進行癌や再発癌に対して、当初期待した以上の優れた臨床的効果を示すこともあり、さらに期待が高まっている。しかし、これらの癌免疫療法の問題点は、その効果が一部の患者において限定的に認められることであり、不応性の機序の解明によってより有効な治療戦略の開発が求められる。そこで本研究は、口腔癌に対する有効な免疫療法の開発を目的とし、担癌宿主で増加する骨髄由来免疫抑制性細胞の特性解析により、免疫チェックポイント分子阻害による抗腫瘍効果を最大限に引き出す新規免疫療法の可能性について解析をおこなっている。特に、加齢変化に伴う骨髄由来免疫抑制性細胞の変化と免疫抑制への関与は最大の関心事であり、免疫老化が、この骨髄由来免疫抑制性細胞の形質や機能にどのような修飾効果を及ぼしているか、また、どのように免疫チェックポイント分子阻害の反応と関連しているかという点については不明な点が多い。本研究では、これらの疑問に対して、マウス口腔癌モデルを使用した免疫学的な解析を進め、若年マウスと老齢マウスで腫瘍増殖を比較したところ、老齢マウスで移植腫瘍の増殖が有意に早く、また、老齢マウスで骨髄由来免疫抑制性細胞や制御性T細胞などの免疫抑制性細胞の割合が増加していることが明らかとなった。また、老齢担癌宿主と若齢担癌宿主に比較において、老齢の宿主のT細胞上における免疫チャックポイント分子群であるPD-1およびCTLA-4の発現が、若齢の宿主のT細胞よりも有意に増強していることも明らかとなった。さらに、PD-1およびCTLA-4に対する標的化抗体の投与の抗腫瘍効果は、老齢の担癌宿主で特に優れた効果を示すことが明らかとなった。以上より、老齢担癌宿主に対する治療戦略上、免疫チェックポイント分子群の標的化が極めて重要であることを示唆する結果であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウス口腔癌モデルの作製および、免疫学的な基礎解析の手法が確立され、当初計画していた動物実験と解析は概ね予定通りに行えている。具体的には、若齢の口腔癌マウスと老齢の口腔癌マウスを用いた比較検討の結果、老齢の口腔癌宿主における免疫学的な特徴について明らかとなってきており、それらの標的化の手法と治療効果についても研究成果が得られている。以上の結果から、本研究の進捗状況は、当初の予定どおり概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画としては、老齢の口腔癌宿主における免疫学的な特徴のさらなる詳細な解析を検討している。具体的には、老齢の口腔癌マウスとコントロールとしての若齢の口腔癌マウスより腫瘍組織、脾臓、リンパ節、末梢血を採取し、それぞれの臓器におけるCD11b、Gr-1 陽性細胞をフローサイトメトリーで解析する。さらに、それらの細胞における下記の項目を比較検討し、老齢宿主の骨髄由来免疫抑制性細胞の特異性について評価する。① CD80、CD86、CD40、CD54、MHC-ClassI、MHC-ClassII、CD124、CD115、PD-L1、PD-L2 などの表面抗原の発現を解析。② ROS、NO、Arginase I、VEGF、MMP9、S100A など、免疫抑制機能に重要な因子についてその発現レベルを細胞内染色およびリアルタイムPCR により解析。③ MDSC をセルソーティングで分離し、 in vitro による機能解析によって、免疫抑制機能について評価。④ 各組織における免疫細胞の出現頻度を、免疫組織学的に解析。
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Causes of Carryover |
当初購入を予定して抗体試薬に国内在庫がなく、輸入手配が必要となったために、動物実験を含めて計画内容の一部を次年度に繰り下げることになった。そのため、前年度での抗体の購入をいったんキャンセルとし、次年度で購入予定であり、資金を繰り越すこととなった。
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Research Products
(5 results)