2021 Fiscal Year Research-status Report
腫瘍性骨吸収機序の研究:RANKL発現調節と破骨細胞形成を軸とした網羅的解析
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19K10266
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
相川 友直 広島大学, 医系科学研究科(歯), 教授 (00362674)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 骨吸収 / 扁平上皮癌 / IL-7 / RANKL / T細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
扁平上皮癌による骨吸収の分子メカニズムを明らかにするために、腫瘍微小環境における破骨細胞活性化因子 RANKLの発現と破骨細胞活性化を検討した。実験モデ ルには、研究代表者らが作成した扁平上皮癌のシンジェニック骨吸収モデルを用いた。すなわち、C3Hマウス扁平上皮癌細胞株 SCCVIIの亜株、浸潤型亜株と圧迫 型亜株の2つを用いた。C3Hマウス頭蓋に移植すると、浸潤型細胞は著明な破骨細胞形成と骨破壊をきたし、圧迫型細胞は破骨細胞形成に乏しく圧迫型の骨吸収 と反応性骨形成をきたし、口腔扁平上皮癌の2つの骨吸収様式を模倣した。シンジェニックマウスの骨吸収はマイクロCTによる骨欠損部の評価、組織学的評価、 および定量的RT-PCRによる骨吸収遺伝子発現で評価した。 二つの培養細胞およびマウス腫瘍組織の遺伝子発現をRNAシークエンス法で網羅的に検討した結果、IL-7は浸潤型腫瘍の骨吸収部位近傍で有意に高く発現した。 浸潤型扁平上皮癌細胞のIL-7発現は圧迫型の8倍高く、IL-7作用の標的細胞の1つであるT細胞の浸潤型腫瘍内への浸潤は圧迫型の約11倍高かった。腫瘍内T細胞 におけるRANKL発現をCD3とRANKLの二重染色で検討したところ、骨吸収部近傍のT細胞はRANKL発現陽性であった。一方、圧迫型腫瘍ではCD3陽性T細胞も少ない が、RANKL陽性細胞はほとんど観察されなかった。成熟T細胞を欠損するヌードマウスでの浸潤型亜株の腫瘍増殖と骨吸収を検討すると、腫瘍増殖は増大したが、 骨吸収は減少し、骨吸収にT細胞浸潤が関与していることが示唆された。 浸潤型腫瘍を移植したシンジェニックマウスに抗IL-7抗体を局所投与あるいは腹腔内投与すると、骨吸収面積は著しく縮小した。組織学的にも破骨細胞形成は 抑制され、腫瘍内RANKL発現は減少した。骨吸収にIL-7と腫瘍内T細胞が関与することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画の予定通り、腫瘍による骨吸収、骨破壊の違いを評価できる方法としてマウスモデルを確立できた。そのマウスモデルを用いてRNAシークエンス法を用 いて骨吸収様式の違いに関連する遺伝子発現を網羅的に解析することができた。解析結果を分子機能別に分類・検討した結果では、分子群別に有意な差は無かっ たものの、個々の分子を検討した結果、研究目的に合致する分子が探索できた。さらに、実験モデルでも分子機序を評価できたため、概ね順調に進展してきた。 研究代表者が2022年1月1日付けで現施設に異動したため、異動前、異動後に研究の遂行ができない期間が生じたため、研究期間を2023年度までとする繰越申請を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
候補分子の作用のターゲット細胞は微小環境内のT細胞と間質線維芽細胞とし、それぞれの効果を in vitro で確認するとともに、in vivo でさらなる組織学的 所見、生化学的な所見を見い出す方針である。 扁平上皮癌に普遍的に作用する分子機序であることは、臨床検体を用いた研究で行う予定である。 さらに、本研究のRNAシークエンス法で他にも有意義な発現分子群が候補にあるため、順次、同様な分子機序解析と機能解析を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
令和3年度は、異動に伴う種々の業務により、研究活動が停滞せざるを得ない状況が生じたため、研究期間を延長することで、令和4年度に残予算執行と研究継続を行う予定である。令和4年度に繰り越した予算は、成果発表の投稿費・印刷費、国内旅費、および抗体・試薬・消耗品などの物品費として使用する計画である。
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