2020 Fiscal Year Research-status Report
口腔がん幹細胞標的ワクチンを主体とした個別化・複合がん免疫療法の開発
Project/Area Number |
19K10292
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
宮崎 晃亘 札幌医科大学, 医学部, 教授 (10305237)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中井 裕美 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (80792126)
小林 淳一 札幌医科大学, 医学部, 助教 (80404739)
土橋 恵 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (50815264)
宮本 昇 琉球大学, 医学部附属病院, 助教 (80749565)
岡本 準也 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (10749592)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | がん免疫療法 / 口腔がん / がんペプチドワクチン療法 / がん特異抗原 / 免疫逃避機構 / がん幹細胞 / HLA class I / バイオマーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
腫瘍微小環境(TME)における抗腫瘍免疫応答には各種免疫担当細胞が複雑に関与している。有効な個別化・複合免疫療法を確立するためには、TMEにおける抗腫瘍免疫応答メカニズムの解明やバイオマーカーの開発が重要である。 これまでの研究でHLA class Iの発現低下が、口腔扁平上皮癌の重大な予後不良因子であることを明らかにした。 新たに樹立した口腔癌細胞株をNSGマウスの皮下に移植し、HLA class Iを発現する高分化型扁平上皮癌であることを確認した。患者の末梢血から末梢血単核球(PBMC)を、手術検体から腫瘍浸潤リンパ球(TIL)をそれぞれ分離した。今後は自家癌特異的細胞傷害性T細胞(CTL)クローンを作製し、癌抗原ペプチドの同定を行う計画である。一方、口腔癌細胞にCDDPや放射線照射のストレスを加えるとPD-L1発現が誘導され、免疫逃避の関与を示唆する所見が得られた。 口腔癌の腫瘍浸潤先端部(IF)および腫瘍中心部(TCe)におけるFoxP3陽性T細胞とCTLA-4陽性細胞の発現について、手術検体を用いて免疫組織化学染色により検討したところ、IFの腫瘍実質におけるFoxP3陽性T細胞の高発現群の全生存率が有意に高いことが明らかとなった。IFの腫瘍実質におけるFoxP3陽性T細胞は制御性T細胞(Treg)としての抑制活性を持たないpopulationである可能性が考えられ、CTLA-4陽性細胞がFoxP3陽性T細胞の機能を抑制していることが示唆された。CD8陽性T細胞に加えFoxP3陽性T細胞は有用な予後予測バイオマーカーとなり得ることが明らかとなった。また、TMEにおける腫瘍間質境界部のborderline microenvironment fibrosis(bMF)陽性群の全生存率が陰性群と比較して有意に低いことから、bMFが重要な予後不良因子であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
樹立した新規癌細胞株とその由来患者から得られたPBMCあるいはTILとの共培養により、自家癌特異的CTLの誘導に成功したが、CTLのクローニングに時間を要している。
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Strategy for Future Research Activity |
新規癌細胞株の樹立とその由来患者のPBMCあるいはTILから自家癌特異的CTLを繰り返し誘導し、CTLクローンを単離する。さらに、培養した癌細胞から癌幹細胞を分離し、HLA class Iの中でも日本人に多いA24に提示されるペプチド配列を解析する予定である。 さらに、口腔扁平上皮癌の生検あるいは手術検体を用いて、腫瘍微小環境における各種免疫担当細胞の発現レベルを免疫組織化学染色により検討する。 癌幹細胞を標的としたペプチドワクチン療法や免疫逃避機構の解明など多方面での研究開発を進めることにより,作用機序の異なる複数の免疫療法を目指し、さらには抗癌薬や放射線治療との併用療法も視野に入れた基礎的研究を遂行する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大による人の移動、物資の移動が制約された影響で、当初予定していた研究計画の一部にやや遅れがみられる。研究打ち合わせ、学会発表に係る旅費や試薬類の購入が次年度に持ち越しとなり、令和3年度に使用予定の旅費や実験試薬に充当する。
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