2019 Fiscal Year Research-status Report
顎顔面発生のエピジェネティクス解析:低酸素環境の及ぼす影響
Project/Area Number |
19K10306
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
長岡 亮介 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 非常勤講師 (30760805)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
依田 哲也 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (60242210)
井関 祥子 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (80251544)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 唇裂 / 口唇口蓋裂 / 低酸素 / マウス / 動物実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
in vitroのマウス胎仔全胚培養法による低酸素状態が複数の遺伝子発現を抑制し、顔面形成へ影響を与え、顔面突起の癒合不全(唇裂)を生じることは、研究代表者により明らかとされていた。一方、in vivoでの低酸素環境下での妊娠マウス母獣の飼育法は既報で確立を見ており、専用のチャンバーを利用した酸素濃度9%の低酸素状態(通常約21%)で妊娠マウス母獣(胎齢10.5日)を24時間飼育した。結果、肉眼的な形態異常はin vitroでのマウス胎仔全胚培養と同様の結果を生じ、かつ、免疫組織化学染色では血管新生の亢進、細胞増殖の減少、細胞死の増加が確認された。 さらに得られたin vivoでのサンプルを免疫組織化学染色で確認したところ、リン酸化ヒストンの発現で観測される細胞増殖は、顔面突起において右側の方が左側よりも減少していた。細胞死を患側するカスパーゼの発現は右側の方が多かった。これは、細胞増殖および細胞死に左右差が生じることを示唆している。 我々の過去の報告ではin vitroの低酸素環境で右側に唇裂を多く認める結果であった。これを踏まえると、in vivoの低酸素環境で得られた上記の結果も矛盾しないものである。 唇裂は体表に現れる先天異常としては最も高頻度の疾患のひとつでありながらも原因となる要素が多岐にわたり、いまだ明快な原因究明はなされていない状態である。今回の実験結果は既存の実験系から新しい実験モデルを構築できており、唇裂はもともと発症に左右差のある先天異常であるため、それに対する解析として非常に示唆に富んだ方法となりうることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初、共有施設での実験器具(低酸素環境でのマウス飼育器具)の使用が可能となる見込みだったため、管理者側の試験運用期間が終了するのを待ち、使用許可をとる予定であった。しかしながら、試験期間が予定よりも大きく延長されたため、やむなく同等の実験機材を借用をすることで実験を行った。借用期間に限りがあるため、前述の「研究実績の概要」にある実験結果を得るまでには至ったのだが、試行回数の増加による再現性の確認や複数の分析方法を行うには限界があり、結果として当初の予定より実験計画は遅れる結果となった。
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Strategy for Future Research Activity |
共用施設での低酸素環境を実行し、現在までの実験条件の妥当性に更なる検討を加え、研究を継続する。従来の分析方法(免疫組織化学染色、in situ hybridization、RT-PCR)に加えて、形質変化に対するエピジェネティクスの観点からの分析法も検討・追加し、より詳細な分子生物学的な解析を行う。
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Causes of Carryover |
前述の研究計画の進捗状況の通り、本計画上、もっとも高額な低酸素環境でのマウス飼育機材を購入せずに共用設備で代替可能か検討していたのだが、結果的にかなりの時間が経過してから共用設備の使用が難しいことが判明した。今回の研究期間中は機材を購入できなかったため、次年度使用額が発生した次第である。 実験機材を購入できなかったが、一時的に借用することで実験の方向性に間違いがないことは確認できた。次年度に持ち越した助成金でより子細な解析を行う予定である。
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