2020 Fiscal Year Research-status Report
Brain-Mouth interaction in patients with Oral Psychosomatic Dosorders
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19K10328
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
豊福 明 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (10258551)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 歯科心身症 / 舌痛症 / 非定型歯痛 / Phantom bite syndrome / 口腔セネストパチー / 脳画像研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
歯科心身症の病態解明を目指して、従来の「中枢か?末梢か?」の2元論的な議論から脱却し、より立体的な議論が可能となるように、「口腔と脳のあいだ」の機序の検索を行った。特に昨年度に発表した非定型歯痛と三叉神経のneurovascular contact(NVC)との関連性に続いて、痛みとは異なる口腔内の不快感(粘稠感、異常味覚、異物感など)を主徴とする口腔セネストパチーと三叉神経のNVCとの関連をMRIデータと臨床的指標を照らし合わせて検討した。臨床評価には我々が開発したOral-DRSを指標として用いたが、NVCがない群の方が臨床的症状の重症度と社会的機能の障害度が有意に高いことを明らかにした。この結果から臨床的には酷似した表現型であっても、三叉神経のNVCの有無で病態が異なる可能性が示唆された。また以上のような臨床的研究の裏付けに結びつくように、三叉神経領域の慢性疼痛・異常感覚に関する基礎的研究の予備実験にも着手した。 さらに長年を要したが、ようやくPhantom bite syndromeの脳機能画像研究を海外雑誌に発表できた。本症患者では、頭頂葉や視床に置ける微妙な機能異常が病態に関与することを明らかにした。 全般的にコロナ禍で新しいデータの蓄積はやや減速し、中枢レベルでのネットワーク解析は、他の研究機関との往来が大きく制限されやや滞りがちであったものの、その時間や余力をこれまで蓄積したデータを解析することに注力したり、学会発表のまま論文化されていなかった症例報告等も論文発表できた。またこのような非常事態に心身症的病態が増えるといった予測に対して、当科の現状や遠隔医療への可能性等を英国歯科医師会雑誌に投稿し、異例の早さで掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍で新しいデータの蓄積はやや減速したものの、これまで蓄積した臨床データを解析することに注力でき、学会発表のまま論文化されていなかった症例報告等も論文発表できた。特に心身症と誤診されやすい脳器質的疾患の見逃しや内向性口腔がんの症例報告や顎矯正手術に置いて合併する精神疾患の評価の重要性など歯科心身症の「際」の部分の臨床的問題を指摘し、口腔外科や歯科矯正科,あるいは精神科など各専門学会に一石を投じた。またコロナ禍や自然災害のような非常事態に心身症的病態が増えるといった海外研究者の予測に対して、当科の現状や遠隔医療を適用した心理療法への可能性等を英国歯科医師会雑誌に報告でき、相応の反応が得られた。また舌痛症に対して頻用されているクロナゼパムやSNRIの使用に対して、その利点と欠点が諸刃の剣であることをOral Dis誌に報告し迅速に掲載された。当科での治療データの整理や解析もほぼ順調に進行している。中枢レベルでのネットワーク解析は、他の研究機関との往来が大きく制限されやや滞りがちであったが、歯科心身症の診断や治療にかかわる臨床的な問題点の深堀りができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後しばらくは、コロナ禍が長引き、対面式の議論や研究打ち合わせに支障が続く可能性が高く、オンラインでの会議やメールでの議論や情報交換を充実させることでカバーしていく。 現状の見通しでは、コロナ禍の影響で新患データの蓄積が従来の半分から4割減程度になる見込みで、最終年度になるため、従前より蓄積されたデータの整理や解析により重きを置きたい。特に昨年度から取り組んでいる、口腔セネストパチーの臨床的特徴とNeurovascular contactの関連については何としても論文化したい。データ解析のみならず、口腔と中枢の機能連関に関する重要な示唆に富む症例については,積極的に論文化していきたい。一方、奇しくもコロナ禍で露呈した、対面診療に制約が生じた環境下での新しい心理療法のあり方についても検討していきたい。 さらにより中枢側のネットワーク解析として、候補となる脳領域間の神経線維連絡の強度を拡散テンソル画像・トラクトグラフィーなどで解析を進めるべく、専門家の協力を得ながらし準備している。以上のような取り組みの中から、本症の病態生理に基づいた、より実効性の高い集学的治療の方向付けに資する研究に結びつけていきたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため、学会の中止や誌上開催・オンライン開催となったため、計画していた旅費などの使用が出来なかったため。
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Research Products
(19 results)