2019 Fiscal Year Research-status Report
周術期の摂食条件が体内時計に与える影響;遺伝子改変マウスを用いた時間生物学的解析
Project/Area Number |
19K10336
|
Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
大野 幸 鹿児島大学, 医歯学域鹿児島大学病院, 講師 (00535693)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
倉本 恵梨子 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 助教 (60467470)
杉村 光隆 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 教授 (90244954)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 体内時計 / 術後せん妄 / Per2::Lucノックインマウス / 腹時計 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、生活習慣病をはじめとする多くの疾病は、「体内時計」の不調に一因があるという知見が次々と報告され、この分野の研究が急速に進んでいる。中でも食事が「体内時計」に与える影響は大きく、その仕組みを知りうまく活用することで、人々の健康や疾病対策に大きく寄与するのではないかと期待されている。また、「腹時計」は抽象的な概念ではなく、‘経口’摂取による食事刺激が「腹時計」を介した生体リズムの維持において重要であることも古くから指摘されている。そこで申請者は、食事刺激を受け取る「腹時計」の鍵は‘口’にあるのではないかと考え、周術期の口腔内への侵襲や不規則な食事が「腹時計」機構に不調和を招き、その結果が口腔外科領域においても問題となる術後せん妄などの合併症につながるのではないか?という問いに至った。 本研究では、時計遺伝子の1つPeriod2にホタルの発光酵素をつけ、時計遺伝子の発現に応じて細胞が光るよう遺伝子改変されたマウス(PER2::LUCノックインマウス)を用い、三叉神経節におけるリズムを計測する。さらに不規則な食事(制限給餌)と口腔内への侵襲(抜歯)がこのリズムに及ぼす影響を明らかにする。最後に、時計遺伝子の1種であるCry1/Cry2をノックアウトしたマウスを用いて同様の実験を行い、時計遺伝子の役割についても考察を加える方針である。 これまでに、本研究を遂行する上で必要な実験環境の整備が完了したため、次年度より実際の実験に着手する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はマウスの生体リズムを計測するための装置一式のセットアップ行なった。 マウスが活動期の暗期に光暴露されると、それだけで体内時計は狂い、いわゆる時差ボケの状態となり、この時差ボケマウス用いて本研究を遂行しても全く意味をなさない。このような状況を回避するため、当研究室では単独で使用できる動物飼育・実験室を確保しているが、さらにコフィンと呼ばれるマウスのケージを収納する大型の暗箱を設置した。コフィンの中にタイマー付きのLEDライトをセットし、ライトのオンオフ時間を調整することで、中で飼育されているマウスは、外の時間に関係なく体内時間を調整することが可能となった。これにより、実験者が夜間の実験を夜間に行う必要がなくなり昼間に実験をできるようになったが、これは本研究を遂行する上で非常に大きなメリットとなった。さらに、回転かご式自発運動測定装置を自作し、マウスの活動量を輪廻しによって計測できるようになったが、最終的な解析プログラムの調整を行なっている段階である。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、実際のデータ採取に取りかかる予定である。 1)12週齢の雄性マウス(PER2::LUCノックインマウス)を、室温23 ±1℃の静穏な施設において、自由給水・自由摂食、12時間ごとの明暗サイクル(明期;8-20時、暗期;20-8時)条件下で飼育し、2週間にわたり輪廻し活動を計測する。 2)自由摂食群、制限給餌群、自由摂食+抜歯群、制限給餌+抜歯群の4群にわけ、それぞれ輪廻し活動を2週間にわたり計測する。 3)全群とも14時にマウスから視交叉上核及び三叉神経節を摘出し、細胞培養液に入れ、1週間にわたり発光リズムを計測する。 4)得られた輪回活動及び発光リズムの解析を行う。 以上より、視交叉上核及び三叉神経節における時計遺伝子の発現を解析する予定である。
|
Causes of Carryover |
今年度は当初の予定には計上していなかったが、現在使用中の機器が使用できなくなり、新規に購入が必要となる可能性が生じたため、物品費の支出を抑えるように予算配分を行った。 次年度は、実験を維持する上で不可欠な機器から優先的に、次年度使用額で購入予定である。
|