2020 Fiscal Year Research-status Report
口腔癌におけるCaveolin-1 とIL-6の役割
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19K10338
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
光藤 健司 横浜市立大学, 医学研究科, 教授 (70303641)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梅村 将就 横浜市立大学, 医学部, 講師 (50595353)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 口腔癌 / カベオリン1 / Interleukin-6 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度作成したCav-1ノックダウン細胞を引き続き用い,IL-6刺激時の口腔癌細胞の転移・遊走の観察を中心に行った。転移・遊走に関しては,Cav-1ノックダウン細胞に対してIL-6で刺激した際の遊走は抑制の傾向がみられた。癌細胞の転移メカニズムの1つとして重要とされる上皮間葉転換(Epithelial-to-Mesenchymal Transition: EMT)とその関連タンパクの1つであるvimentinの発現について検索を行ったところCav-1ノックダウン細胞において抑制されていた。そこにIL-6で刺激をしたところ、コントロール細胞ではIL-6の刺激でvimentinの発現が促進するのに対し、ノックダウン細胞では発現促進が抑制された。このことから、口腔癌細胞においてIL-6の刺激が癌細胞の上皮間葉転換を促進させる働きは、膜タンパクであるCav-1を介している可能性が示唆された。 IL-6の細胞内での主要シグナル伝達経路として知られているIL-6/STAT経路の活性の有無からIL-6とCav-1の関係についても検討を行った。その結果、口腔癌細胞に対してIL-6で刺激した際に亢進を示すSTAT3(signal transducer and activator of transcription 3)のリン酸化はCav-1のノックダウンの有無では変化がみられなかった。しかし、エネルギー代謝の調節タンパクとして知られるAMPK(AMP-activated protein kinase)のリン酸化はIL-6刺激による亢進の抑制がみられた。これはCav-1がIL-6の刺激によって起こる主要シグナル経路とは異なるシグナル経路で関与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
前年度に作成したCav-1ノックダウン細胞を引き続き用い、IL-6刺激時の口腔癌細胞の転移・遊走の観察を中心に行った。前年度までの先行研究では、IL-6刺激時のCav-1ノックダウン細胞の増殖の明らかな抑制は見られなかった。このことからCav-1はIL-6による癌細胞の増殖促進効果には関与がみられないことと結果づけた。転移・遊走に関しては,Cav-1ノックダウン細胞に対してIL-6刺激した際の遊走は抑制の傾向がみられた。そこで癌細胞の転移メカニズムの1つとして重要とされる上皮間葉転換(Epithelial-to-Mesenchymal Transition: EMT)との関与に注目した。その結果、口腔癌細胞においてIL-6の刺激が癌細胞の上皮間葉転換を促進させる働きは、膜タンパクであるCav-1を通りAMPKを介した経路の活性化によって起こっている可能性が示唆された。これによりCav-1とIL-6のそれぞれの癌促進作用にはエネルギー代謝経路が関与している可能性が示唆され、新たなキーファクターとなりうるタンパクの発見につながった。 このように現在までに順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
口腔癌細胞におけるCav-1とIL-6の相互関係について、口腔癌細胞の転移における関わりが示唆されたことから、動物実験においてそれを検証する必要性がある。Cav-1ノックダウン細胞とcontrol shRNA細胞をそれぞれマウスの皮下に注入し生着させた口腔癌皮下腫瘍モデルを作成する.Cav-1ノックダウン細胞を生着させた動物の腫瘍部にIL-6を局所注射して経日的な腫瘍の大きさを評価し,腫瘍増殖の観察終了時には転移の有無について検討する. 別の動物モデルとして、免疫不全マウス(BALB/c-nu/nu)の尾静脈から癌細胞の懸濁液を注入し肺転移巣ができるか観察する。この方法によって血管移行性の転移が起こるか検討する。注入から経日的な生存下での観察が必要であるため、小動物用CTによって数日おきに観察を行い、画像上で判断できる肺転移巣の数を数えることで転移の有無を確認する。これにより、Cav-1ノックダウンの有無及びIL-6刺激の有無で転移性の変化がみられるか確認する。Cav-1ノックダウン時に口腔癌の遠隔転移の抑制がみられるか確認することで,in vivoでも口腔癌の遊走・転移の抑制の有無を確認することができる. また、Cav-1とIL-6の相互関係について引き続きキーシグナル経路の探索の必要がある。AMPKシグナルとEMTシグナルとの関連について詳細に検討する。
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Causes of Carryover |
新型ウイルス感染症の拡大により予定していた出張がオンラインでの参加になったため旅費を削減することができた. 本年度予定している口腔癌細胞におけるCav-1とIL-6の相互関係についての動物実験で使用する.
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