2021 Fiscal Year Research-status Report
Association between oral bacteria and oral cancer metastasis
Project/Area Number |
19K10350
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大廣 洋一 北海道大学, 歯学研究院, 教授 (40301915)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北村 哲也 北海道大学, 医学研究院, 客員研究員 (00451451)
樋田 京子 北海道大学, 歯学研究院, 教授 (40399952)
長谷部 晃 北海道大学, 歯学研究院, 教授 (90281815)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 口腔がん / 舌がん / 口腔常在菌 / 頸部転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き、舌がんの後発転移に口腔常在菌が関与するか検討するために、頸部郭清術によって得られた症例より得られた標本において病理組織学的に転移を認めたリンパ節と転移を認めなかったリンパ節の未染色標本からDNAを抽出し、PCRにより細菌由来の16s rDNAを検出した.PCRは再現性が確認されたサイクル数50サイクルにて実施した。手術で切除した頸部郭清組織から摘出したリンパ節において、病理組織学的に転移を認めた症例では腫瘍実質において壊死部分が多く含まれているものが半数以上を占めていた。壊死部分が多いリンパ節では、16s rDNAの発現を認めないか発現が弱いなど、PCRの測定が安定せず、DNA抽出時の試料採取に工夫が必要と考えられた。現在、顕微鏡で確認しながら、壊死部分を含まないように試料を採取する方法について検討している。また、舌がん原発の腫瘍細胞に口腔常在菌が存在するか検討することを行っている。この検討では、腫瘍表層では口腔内に暴露されているため、表在性の部分を避け、腫瘍の深部において細菌由来の16s rDNAが発現しているか検討している。この検討により、病理組織学的に転移ありと判断した7個のリンパ節中に4個でPCRにて16s rDNAの発現を認めたことから転移に16s rDNAの存在が重要か裏打ちの検討になると考えている。また、がん細胞の浸潤能や転移能を亢進し、がんの悪性化に関係するムチン型糖タンパク質ポドプラニンを試験的に6例に対して免疫染色を実施したが、明らかに陽性であったのは2例であった。以上、検討方法および検討した症例数に限りがあるため、本年度も症例の蓄積が必要と考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
頸部後発転移を来した早期舌がん6症例の頸部郭清組織から得られたリンパ節13個に対して未染色のパラフィン包埋切片からDNAを抽出し細菌由来の 16s rDNAの発現を検討した. 1)病理組織学的に転移陽性と診断し、壊死範囲の評価が可能であった6個のリンパ節について16s rDNAの発現を検討した。壊死部分が広範に認められた試料2個中、1個で16s rDNAの発現を認め、リンパ節の約半分に壊死を認めた1個では16s rDNAの発現を認め、壊死部分の少ないリンパ節3個ではすべてで16s rDNAの発現を認めた。壊死部分が少ない(ほとんど認めない)試料が有効なのかさらに検討が必要と考える。 2)原発を検討し得た舌がんの深部浸潤が強い3例において、病理組織学的に転移を認めた4個中2個で16s rDNAの発現を認め、病理組織学的に転移を認めなかったリンパ節3個すべてで16s rDNAの発現を認めなかった。また、浅い腫瘍は2例において病理組織学的に転移を認めた2個中2個で16s rDNAの発現を認め、病理組織学的に転移を認めなかったリンパ節2個すべてで16s rDNAの発現を認めなかった。浸潤の深さと転移については関係があると考えられているが、この関係における口腔常在菌の関与を示すには症例数を増やす必要があると考える。 3)免疫染色による原発舌がんのポドプラニンの発現は、検討した6例中2例で陽性であった。この症例のリンパ節は壊死部分が少ないにもかかわらず病理組織学的転移陽性と16s rDNAの発現は一致しなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
1)検討症例数を増加させることが課題である。前年度検討予定であった原発舌がんの深部における細菌由来の 16s rDNAが存在するか検討する.ただし,舌がん表面は口腔環境に暴露しているため、腫瘍深部から腫瘍組織を採取する必要がある。そのため、ヘマトキシリン-エオジン染色により汚染部分を顕微鏡下で確認し腫瘍深部から試料を回収する. 2)下記項目について検討するが同時に転移リンパ節中における細菌由来の16s rDNAの症例数を増やす必要があると考える。 a)原発舌がんとリンパ節の両方で細菌由来の16s rDNAが検出された症例においては,口腔常在菌細菌叢の検討を視野に入れる。b)原発舌がんのリンパ管侵襲を抗ポドプラニン抗体(D2-40)で免疫組織学的に検討する.浸潤が深いほど転移しやすいことが知られているため、この検討では、リンパ管侵襲が浸潤の深さに与える影響を考慮し、前述の原発舌がんにおける口腔常在菌の存在と浸潤の深さを比較検討する。c)原因菌を同定出来ない場合、培養細菌株を用いてin vitroにおいて培養口腔がん細胞株と共培養し,ボイデンチャンバー法ならびにスクラッチアッセイにより腫瘍細胞の運動能の変化ならびに細胞表面の接着因子の発現の変化を測定し,転移形成に影響するのメカニズムを解析する.d)16s rDNA発現症例における臨床的評価項目(後発頸部リンパ節転移出現率と出現時期,全生存期間,患者背景,病理組織診断,SCC抗原)を検討し予後への影響を解析する.
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Causes of Carryover |
所属施設における教育、臨床ならびに社会貢献部分の仕事量が増大したため、研究に割くエフォートが低下した。今年度は改善しているため、研究のエフォートを増加させる。次年度使用額は、おもに追加実験の消耗品および論文作成費に充てる予定である。
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