2021 Fiscal Year Research-status Report
周術期脳虚血モデルに対するデルタオピオイド受容体アゴニストの効果
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19K10357
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
前田 茂 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (50253000)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
樋口 仁 岡山大学, 大学病院, 准教授 (30423320)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 脳虚血 / 全身麻酔 / 炎症 / アポトーシス |
Outline of Annual Research Achievements |
現在までに動物と細胞を用いて実験モデルを確立し,いくつかの実験を行った。動物では周術期脳虚血モデルとして短時間の片側の総頚動脈の結紮と少量のlipopolysaccharide(LPS)の腹腔内投与を組み合わせたものを作成し,海馬歯状回においてDNA断片化が認められたとともに,IL-6 mRNA発現の増強が確認された。また,マウス海馬プライマリセルカルチャに対して,リコンビナントTNF alphaを作用させたところ,TNF alpha受容体に対する強いシグナルが認められた。これらのことから,炎症反応が海馬で惹起されることにより,海馬ニューロン膜上のTNF受容体が活性化され,それから始まるシグナル伝達を介してアポトーシスが惹起されると考えられた。また,マウスミクログリア由来のMG6をlipopolysaccharide(LPS)で刺激すると炎症反応としてIL-6の分泌が増加するが,それに対して,オピオイドδ受容体特異的作動薬であるSNC80を作用させたところ,濃度依存的にLPSに対するIL-6の分泌を抑制した。しかし,その効果に対してオピオイドδ受容体特異的拮抗薬であるNaltrindoleとBD1008を用いて,SNC80の作用を検証したところ,いずれも濃度依存的 にSNC80の効果を増強した。また,SNC80の作用機序を調べるため,MAPKKのMEKの阻害役であるPD58059およびホスファチジルイノシトール3-キナーゼ阻害薬であるWortmanninを作用させたが,いずれもSNC80の作用に対する効果を認めなかった。その上で,今年度は現在まで行ってきた実験の再現と検証を進める予定であったが,年度当初に懸念された通り,転勤による新たな研究室を稼働させることに留まり,実験自体はほとんど進捗していない。そのため,期間を延長して2022年度に継続して実験をすることとした。一方でデータをまとめて海外の学会で発表することはできたので,それを踏まえて今後の研究を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度は,転勤により新しい勤務地で研究を行うこととなったが,当初懸念された通り,思うように実験は進んでいない。そのため2021年度で終了する予定であった研究を1年延長し,2022年度に行うこととした。今までの結果から,オピオイドδ受容体作動薬はLPSによる炎症反応を抑制することがわかったが,その機序の説明ができていない。2022年度はその機序を解明することを目的とする。
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Strategy for Future Research Activity |
新しい研究室では2021年度に整備を進め,細胞培養を始め,基本的な解析は行えるようになった。そこで,延長となった2022年度は培養ミクログリアを使った実験を行う予定とする。具体的には,低酸素培養キットとグルコースを含まない培地を用いて,OGD環境を作り,その培地に1 ng/mlの 少量のLPSを添加し周術期脳虚血モデルを模した状態とし,それを基本として実験を進める。評価する項目は,ウエスタンブロットによるCleaved Caspase-3の比較定量,およびELISAによる炎症性サイトカインの定量測定で,SNC80の抗炎症および抗アポトーシス効果を調べる。さらにcAMP/PKAおよびJAK/STATのシグナル伝達を想定しcAMP/PKAの経路ではJAK2およびSTAT3のリン酸化,I-kappaB(IKB)を介した経路ではIKBの他,p50/p65のリン酸化を指標としてウエスタンブロットにより調べる。
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Causes of Carryover |
新しい研究室では2021年度に整備を進め,細胞培養を始めとする基本的な解析は行えるようになった。しかし,そのような整備に莫大な時間を要し,実際に実験で結果を出すには至らなかった。そこで,延長となった2022年度は培養ミクログリアを使った実験を行う予定とする。具体的には,低酸素培養キットとグルコースを含まない培地を用いて,OGD環境を作り,その培地に1 ng/mlの 少量のLPSを添加し周術期脳虚血モデルを模した状態とし,それを基本として実験を進める。評価する項目は,ウエスタンブロットによるCleaved Caspase-3の比較定量,およびELISAによる炎症性サイトカインの定量測定で,SNC80の抗炎症および抗アポトーシス効果を調べる。さらにcAMP/PKAおよびJAK/STATのシグナル伝達を想定しcAMP/PKAの経路ではJAK2およびSTAT3のリン酸化,I-kappaB(IKB)を介した経路ではIKBの他,p50/p65のリン酸化を指標としてウエスタンブロットにより調べる。
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Research Products
(1 results)