2020 Fiscal Year Research-status Report
舌痛症患者における疼痛調節機構とレスティングステートの変化について
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19K10368
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
篠崎 貴弘 日本大学, 歯学部, 講師 (50339230)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 修 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (50302716)
今村 佳樹 日本大学, 歯学部, 教授 (90176503)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 咀嚼筋筋膜痛 / MRI / コネクティビティ |
Outline of Annual Research Achievements |
筋筋膜痛は、口腔や顔面に原因不明な疼痛を主徴とする慢性疼痛疾患である。本疾患は口腔に器質的疾患が認めらないにもかかわらず口腔(舌、口蓋、口、唇など)に灼熱感を伴った慢性疼痛を主症状とし、慢性的な経過を取り患者のQOLを低下させている。近年、筋筋膜痛は疼痛に対する認知情動系が疼痛の認知機構を修飾し疼痛の認知に影響を与え、疼痛の強度が上昇するという病態の形成に関わっていると報告されている。そこで脳機能画像法fMRI)の一種であるdefaultmode network(DMN) と脳のあらゆる部位のコネクティビティの解析を応用し、島皮質や頭頂連合野といった痛み関連領域の果たす役割に着目して筋筋膜痛の患者が感じている疼痛の脳内処理過程を解明する事を目的とした。 令和2年度は、筋筋膜痛患者15名、健常者16名の撮像を行う予定であった。しかし、コロナ禍により感染予防の観点から、令和2年5月~令和3年3月末まで撮像を中止した。このため今年度の撮像は5名のみであった。昨年度、当該年度の被験者の撮像データを解析した結果、筋筋膜痛患者のDMN、脳のコネクティビティと健常者のそれらを比較すると、筋筋膜痛患者は、視床から前頭前野へのネットワーク、視床から帯状皮質へのネットワークがネガティブに反応していた。また、体性感覚野からのネットワークを調べると、帯状皮質へのネットワークがネガティブになっていた。一方、体性感覚野と海馬および海馬旁回へのネットワークは、ポジティブになっていた。これは、舌痛症患者は、過去の痛み刺激経験から、疼痛に関する経験を参照し現在の疼痛に反映していることが推測された。その結果、本来の疼痛刺激から、修飾された疼痛刺激に加算され、認知している痛み刺激反応が増幅していると推測される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
被験者を募り、東京大学病院放射線科にて筋筋膜痛患者15名、健常者16名の撮像を行う予定であった。しかし、コロナ禍により令和2年5月から令和3年3月まで、感染予防観点から被験者の募集および撮像が中止された。そのため、撮像数は5名であった。これら被験者の撮像データはMATLAB2018aにて、voxel-based morphometry解析およびresting stat fMRIによる疼痛関連領域間神経結合について解析中である。さらに、脳領域間のレスティングステイトfMRIにおける協調した活動のレベルを計測することによって機能的結合の研究が可能なことから、特定領域と局所ネットワークの機能的結合についてや脳ネットワークにおける機能的連絡の全体的な構成について計測している。これは、CONN(A functional Connectivity Toolbox for Correlated and Anticorrelated Brain Networks)を用い、安静状態と刺激を加えた状態を比較検討することにより、脳の疼痛ネットワークを探索中である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、東京大学医学部附属病院放射線科にてMRI撮像を行っている。現在、コロナ禍により学外での研究活動が制限されている。今後の国、自治体、日本大学本部の感染予防指針に則り、MRI撮像を継続することとする。 また、感染予防対策を行いできるだけ学内での撮像が行えるように研究計画を変更する。具体的には、日本大学病院放射線科のMRI装置の使用を考慮に入れる。また、被験者のリクルートに関して、筋筋膜痛群では日本大学歯学部付属歯科病院に初診で来院される患者を対象としているが、患者数が十分でないため、近隣の歯科医院に舌痛症患者を紹介してもらうように対応している。さらに、健常被験者に関して、当科関係者からの紹介者を対象に広げ、被験者数を増加させる方策を立てている。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、コロナ禍により、発表予定であった学会がWeb開催となった。そのため、学会参加経費が未使用となった。また、感染予防のため、MRI撮像が行えなかったため、謝金が未使用となった。 繰越金と令和3年度助成金を合わせて、MRI撮像と撮像結果の解析および学会発表に使用する予定である。
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