2020 Fiscal Year Research-status Report
統合的オミックス解析による希少遺伝性疾患における歯数を規定する分子機構の解明
Project/Area Number |
19K10376
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
小川 卓也 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 准教授 (50401360)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 敏博 東京医科歯科大学, 統合研究機構, 教授 (50292850)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 多数歯欠損 / 鎖骨頭蓋異形成症 / 希少遺伝性疾患 / 統合的オミックス解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
顎顔面先天異常を伴う希少遺伝性疾患患者における歯の異常に関して、同一の遺伝子変異を有するものでもその表現型が異なることが多く、一次的なゲノムデータ解析によるゲノム配列情報だけでは、形質情報との因果関係を明らかにするのは極めて困難を要する。本課題では、歯の数ならびに形態異常を有する希少遺伝性疾患患者から得られる大規模ヒト疾患ゲノムデータを、生物学・臨床情報と分野横断的に統合することで、従来型のゲノム配列解析では困難であった遺伝情報と形質情報の関連性を遺伝統計学的観点から明らかにし、歯の数ならびに形態を規定する分子機構を統合的オミックス解析により解明することを目的とした。2020年度の研究実績の概要を以下に示す。 同一家系内に2名の非症候性oligodontia患者を認める日本人家系を対象に全エクソーム解析を実施したところ、罹患者全員に1q43に位置し、脳、肝臓、脂肪など多臓器での発現が報告されている光感受性Gタンパク質共役型受容体(GPCR)をコードするOpsin3(OPN3)に共通するミスセンス変異(c.668C>T, p.Gly223Asp)を同定した。この変異は公共のデータベースでの報告は認められなかった。さらに、48名の遺伝的に独立した非症候性oligodontia患者に対しOPN3のターゲットシークエンス解析を行ったところ、さらに別のミスセンス変異(c.768C>T, p.Met256Ile)を同定し、この変異はin silico予測ツールにおいて病的と予測された。また、マウス歯胚を用いた免疫染色により、OPN3タンパク質の局在は蕾状期から鐘状期までの歯胚および周辺組織に特異的に認められた。これらの結果から、OPN3が非症候性oligodontia発症に関与する新規遺伝子であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
同一家系内に2名の非症候性oligodontia患者を認める家系を対象にしたエクソーム解析ならびに48名の遺伝的に独立した非症候性oligodontia患者に対するOPN3のターゲットシークエンス解析により、OPN3が非症候性oligodontia発症に関与する新規遺伝子であることを明らかにすることができた。また鎖骨頭蓋異形成症においても、2019年度に採得した患者とは別な罹患患者から抜歯した過剰埋伏歯から培養歯髄細胞を樹立することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
日本人非症候性oligodontiaの家系に認められたOPN3の歯胚発生における機能解析をin vitroで行うと同時に、他の罹患者におけるOPN3の変異の有無、ならびに網羅的な解析を他の家系にも広げさらなる新規遺伝子の可能性を検索する。得られた遺伝子型と表現型の関連性を明らかにすることで、欠損歯数に与える因子を同定する。また鎖骨頭蓋異形成症における疾患細胞の網羅的な解析を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大のため、各種学会での成果発表がオンラインとなり、旅費の計上の必要がなくなったこと、また鎖骨頭蓋異形成症における疾患細胞の網羅的な解析が行えなかったため。鎖骨頭蓋異形成症における疾患細胞ならびに非症候性oligodontia患者の網羅的な解析に費やす。
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