2019 Fiscal Year Research-status Report
自閉症児由来乳歯歯髄幹細胞を活用した酸化ストレスとミトコンドリアとの関係解明
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19K10387
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
増田 啓次 九州大学, 大学病院, 講師 (60392122)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 大樹 九州大学, 歯学研究院, 助教 (30452709)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 自閉症 / 酸化ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
自閉症スペクトラム障害(ASD)は、ニューロン発達やシナプス形成など脳の発達異常が原因である。しかし、生きたヒトの脳を対象とした詳細な解析は、検体採取と研究手法の制限により進んでいない。本研究の目的は、ASDの発症機序として酸化ストレスとミトコンドリア機能との関連性を明らかにすることである。材料は、申請者らが九州大学病院での歯科診療業務の一環として、ASD児および定型発達児(健常コントロール)から提供を受けたヒト脱落乳歯由来幹細胞(SHED)を用いる。SHEDは、ニューロンへ効率的に分化誘導できるため病態解明を目的としたヒト細胞モデルとして有用である。本研究では、自閉症児の神経発達における酸化ストレス障害とミトコンドリア障害との関連性について、ASD児由来SHEDを細胞モデルとして解析する。 2019年度は、ASD児由来SHEDの抗酸化能を調べるため、ミトコンドリアROSレベルを測定、正常SHEDと比較解析した。さらに、SHEDからドーパミン作動性ニューロンへの分化誘導後、ミトコンドリアROSレベルを比較解析した。ASD児由来SHEDのミトコンドリアROSレベルは、定型発達児由来細胞と比較し、低下していた。一方で、ドーパミン作動性ニューロン分化誘導するとミトコンドリアROSレベルが上昇していた。これは、ASD児由来幹細胞がニューロン分化に伴い抗酸化ストレス作用が低下する可能性を示唆する。今後、サンプル数を増やしてこの傾向の再現性を確認するとともに、ミトコンドリアの抗酸化能とミトコンドリア活性に焦点を当て、その原因を解明する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自閉症児・定型発達児からの乳歯歯髄の継続的提供、SHEDの培養、ドーパミン作動性ニューロンへの分化誘導、ROSの測定、ミトコンドリア活性の測定に必要な実験系は確立できている。
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Strategy for Future Research Activity |
自閉症児由来細胞を酸化ストレス負荷試薬ピオシアニンの存在下で培養し、ROSレベルの測定、抗酸化酵素の発現、ミトコンドリア活性の変化を調べる。本研究計画立案時に、自閉症児の不均一な遺伝背景のため、自閉症グループ間のバラツキや定型発達児との有意差が不明確になる可能性、および細胞生物学的な差が検出された場合でも、その原因を分子生物学的に特定できない可能性を想定している。したがって、現在、自閉症様症状を特徴とするRett症候群患児由来の歯髄幹細胞を、遺伝要因(MECP2遺伝子欠損)が明確なモデルとして解析する準備を進めている。
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Causes of Carryover |
初年度として必要と見積もっていた細胞培養器具および試薬類が充足していた。次年度に細胞培養器具および試薬購入に充てる予定である。
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