歯髄光電脈波の定量解析による歯髄の血行動態および機能評価に関する研究

2019 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 19K10401
• Research Institution: Tokyo Medical and Dental University
• Principal Investigator: 柿野 聡子 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 講師 (30516307)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 松浦 祐司 東北大学, 医工学研究科, 教授 (10241530)
• Project Period (FY): 2019-04-01 – 2022-03-31
• Keywords: 歯髄診断 / 透過型光電脈波法 / Pulse transit time / 相互相関解析 / 非侵襲診断

Outline of Annual Research Achievements

歯髄は血管や神経、リンパ管などから構成され、歯に栄養を供給する組織である。歯髄の病態診断は、歯科治療における治療方針の決定、歯髄保存の可否において重要な判断材料となるため、正確な診断が求められる。これまでの研究により、LED(Light emitting diode)の透過光を利用した透過型光電脈波測定（TLP; Transmitted-light plethysmography）より、歯髄の生活反応を血流の有無という観点より非侵襲的に診断できるようになった。しかし、小児患者の外傷歯の歯髄血流測定より、歯髄血液は存在しても必ずしも健全歯髄と言えないケースも多いことがわかってきた。本研究では、歯髄の容積脈波（歯髄脈波）の特性を多角的に定量解析し、歯髄血液の有無に加え、加齢や外傷による歯髄の血管弾性の変化、機能や病態の変化など、歯の健康度についての情報を抽出する方法を確立することを目的とし、従来の診断法と併用することでより信頼性の高い歯髄診断を目指している。
初年度は、歯髄脈波と指尖脈波の相互相関解析を行った。被験歯を健全歯(n=40)、外傷歯(n=112)、失活歯(n=20)に分類した。外傷歯は、外傷の既往があり生活歯髄を有する歯、失活歯は、従来の臨床診断法により失活歯髄と判断し根管治療を行い、歯髄腔内に血液を確認できなかった歯とした。各被験歯において両脈波の相互相関係数R（0≦R≦1）を算出し、指尖脈波に対する歯髄脈波の同期性を定量的に算出した。その結果、健全歯、外傷歯、失活歯の３群の相互相関係数には有意差が認められた。
さらに、TLPによる歯髄腔内血液の有無を客観的に判定するため、ROC曲線を用いて統計学的にTLP法による歯髄診断のカットオフ値（生活歯と失活歯を区切る境界値）を求めた結果、TLP法の感度と特異度は、いずれも従来から普及している電気診より高い値となった。

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

当初は、初年度に歯髄脈波振幅測定、及び歯髄脈波伝搬時間（PTT; Pulse transit time）の測定を予定していたが、測定データの収集準備に時間を要しているため、次年度に予定していた相互相関解析を先に行った。順序は入れ替わったものの、全体として進捗状況は順調である。

Strategy for Future Research Activity

次年度は、感染症予防のため、ヒトの測定が予定よりも困難になることが予想される。そのため、まずは初年度にも使用した健全歯、外傷歯、失活歯のデータを用いて自己相関係数の算出を試みる。外傷歯では経過により波形の形状に変化が生じるため、これを定量的に評価することが可能であるかどうかを検証する。また同時に、初年度に予定していた歯髄脈波振幅の測定（young adult 18～39歳、middle adult 40～60歳）及び歯髄脈波の伝搬時間（PTT; Pulse transit time）の測定のための測定機器の準備も進める。

Causes of Carryover

当初の計画ではバイオアンプを購入する予定であったが、初年度は測定ではなく解析を中心に行ったため、購入を見送りにした。
使用計画：次年度は、初年度の解析結果の論文投稿料や、測定に必要な消耗品購入、研究成果発表のために使用する予定である。