2020 Fiscal Year Research-status Report
最適化医療を実現する小児の口呼吸鑑別診断システムの構築
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19K10408
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
村上 大輔 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 助教 (80611798)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲田 絵美 鹿児島大学, 医歯学域鹿児島大学病院, 講師 (30448568)
海原 康孝 大垣女子短期大学, その他部局等, 教授 (60274106)
齊藤 一誠 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (90404540)
櫻井 薫 広島大学, 病院(歯), 助教 (90794793) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 口呼吸 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、機能的、形態的要因から小児の口呼吸病態を鑑別し、最適な医療介入を可能にするクリニカルパスを構築することにある。そこで本研究では、小児の大規模集団を対象に、機能的、形態的調査、ならびに歯科的介入の効果を検証することで、個々の口呼吸の原因鑑別を可能にし、有効な介入法を的確に選択できる医療体制を構築する。 2020年度の実績として、口呼吸に関連があると考えられる「疾患などの全身状態について」、「鼻・のど・耳の状態について」、「口腔と咬合状態について」、「口唇と歯肉の状態について」、「食事の摂取について」の計53項目に関するアンケート調査を継続した。同時に口腔形態の採得を行うとともに、口唇機能の評価として、歯科用口唇筋力固定装置りっぷるくん(松風)を使用し、口唇閉鎖力を計測し、顔面軟組織形態の評価として、非接触型3次元形態計測器VIVID910(コニカミノルタ社:現有設備)を用い、顔面形態の計測を行った。また、口唇閉鎖訓練による機能的介入については、「キラキラ星」の歌に合わせて、唇を「あ・い・う」と動かし、最後に舌を突出する運動を反復する「あいうべ体操」の実施状況の視察、指導を継続しながら、同時にデータ収集も継続した。 また、収集したデータの一部と先行調査の結果について解析を進めたところ、小児の顔面軟組織の成長変化について興味深い結果が得られたため、第57回日本小児歯科学会全国大会にて「小児における顔面軟組織成長変化の長期縦断研究」という演題で発表した。 また、小児における口唇閉鎖不全について大規模疫学調査の解析を行ったところ意義深い知見が得られたため、論文としてまとめEnvironmental health and preventive medicineに掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の達成目標は、機能的、形態的要因から小児の口呼吸病態を鑑別し、最適な医療介入を可能にするクリニカルパスを構築することである。機能的、形態的調査項目によって口呼吸の原因を分類できるようになれば、関連医科との連携の必要性を判断する目安になり、専門性を活かした治療に繋がると考えられる。 そのためには、研究を段階的に進めていく必要があるが、2020年度計画にある小児を対象とした調査では、口呼吸に関連があると考えられる計53項目に関するアンケート調査を実施し、併せて口腔内形態の資料は、歯科健診における口腔内診察等により咬合状態の採取を継続した。顔面軟組織形態の評価には、非接触型3次元形態計測器VIVID910(コニカミノルタ社製:現有設備)を用い、コロナの影響でやや規模の縮小はみられたものの計画に基づいたデータ収集の継続は概ね順調に進んでいる。 また、並列で計画していたデータ解析についても、予定通り得られた結果の一部は解析を進め、これまで明らかとされていなかった顔面軟組織形態における6~12歳の成長変化を、長期的かつ縦断的評価のもとで、明確に示すことができた。今後は対象者の母数、年齢層をさらに広げるとともに、3次元座標系での評価を加え、各部位の成長のピークを把握していく(当内容は2020年度日本小児歯科学会学術大会にて発表)。 また同様に、小児における口唇閉鎖不全の大規模疫学調査の解析の結果、口唇閉鎖不全の発生率は3~12歳において年次的に増加傾向にあり、自己修正や自然治癒が困難であることが示唆され、改めて小児医療におけるクリニカルパスの構築の必要性が示された(当内容は論文としてまとめEnvironmental health and preventive medicineに掲載)。 さらに、2020年度学会発表内容については現在論文作成中であり、国際誌に投稿予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、小児の口呼吸に対する効果的な介入法選択を可能にすることを最終目的とし、3歳から12歳の大規模集団を対象に、① 口呼吸に関連するアンケート、口唇閉鎖力等の機能的調査と口腔や顔面軟組織の形態的調査を経年的に行うことで、② 口呼吸の原因を解明し分類するとともに、③ 病態による口唇閉鎖訓練の効果度の差について検証することで、④ 口呼吸の鑑別ならびに効果的介入の選択法を可視化する。口呼吸を有する小児において、多数の小児のライフステージの早い時期から的確に介入できるようになれば、将来起こり得る弊害を未然に防ぎ、生涯にわたる健康の基礎を獲得できる可能性が高くなることが期待され、その波及効果と普遍性、医療費の削減効果は非常に大きいといえる。 これまでの研究により、未就学児における、口呼吸に関連する生活習慣や全身状態に関するアンケート、口唇閉鎖力計測、顔面軟組織形態の計測は進んでおり、取得データについてはすでに解析も進み、結果については各方面で発表し、ここ2年間で4演題の学会発表を実現するとともに2論文がそれぞれthe Journal of Craniomandibular Practice、Environmental health and preventive medicineに掲載された。また、集団を対象としたあいうべ体操による機能的介入前後の解析も進めており、学会発表、論文作成を予定している。今後も引き続き、上記計測項目を継続収集することで膨大なデータのさらなる蓄積をはかるとともに、収集したデータの解析を深め、的確な治療介入法の選択を可能にする口呼吸の鑑別診断システムの構築をめざし、口呼吸の主原因別分類、病態の解明を行うとともに、機能的介入の顔面軟組織や全身状態への効果を検証していく。
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Causes of Carryover |
当該年度は、コロナ禍の影響もあり、現存施設での計測は辛うじて継続できたものの、予定していた協力施設の拡大や遠方へ出向くことについては断念せざるを得ない状況が続いた。また同様の理由から、学会やセミナー等の中止の影響もあり、旅費や計測機器の輸送費等の支出が当初予定していた額より大幅に減少した。 次年度は計測協力施設の拡大も検討しており、計測に伴う精密機械の輸送や旅費が増加すること、収集しているデータ量が多く、資料整理や解析のための人件費が必要となることが予想される。加えて一部収集したデータからは、有用な結果を複数得られたため、当初の予定より多くの学会発表や論文投稿を見込んでいる。 次年度の研究費の使用計画:2021年度の研究費使用計画は以下の通りである。 物品費:口唇閉鎖力測定用のボタンや文具類等の消耗品、遠隔会議等で使用する機器,旅費:日本小児歯科学会等の各種関連学会の全国会、地方会の参加と研究打ち合わせ、研究協力施設である広島大学での計測に関わる出張費、謝金:研究補助の謝金、その他、論文校正料、投稿料と、計測機器の輸送費を計上した。
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Research Products
(2 results)